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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十八章―邂逅の果て―#3
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レド様に比べたら、俺の前世なんて至って平凡ですよ。この世界のこの国で生まれ育ち、天寿を全うした───今と代わり映えしない、どこにでも存在していそうな人間です」
「……どこにでも存在していそうな人間───って、お前が?」
「そうですが?」
「お前みたいなのが、そこらにありふれているとしたら────頭が痛くなりそうだ」
「失礼ですね」

 まあ…、ジグが何処にでもいそうな人物かって言われると、ちょっと疑問だけど─────

「私も、ジグが前世はどういう人だったのか聴きたいな」

 ジグの前世のことは、タイミングがなくて全く聴けていない。

 精霊についての知識とか、能力や魔術の同時発動ができるようになった原因とか────すごく興味がある。

「そうですか?リゼラ様がそう仰られるのなら」
「……何でリゼにはすんなり話すんだ」

 不服そうなレド様をスルーして、ジグは語り出す。

「前世の俺は、この国がまだ軍国主義だった時代に、とある軍門の貴族家の子息として生を受けました。生家は結構な大貴族だったんですが、肉親は皆『力こそ正義だ』と言い切る“脳筋”タイプだったので────小柄で脆弱だった俺は、幼くして、家門の末端である弱小貴族に養子に出されました。
まあ、当然というべきか────そこでも邪魔者扱いを受け、成人前の自立を算段する破目になりまして。
武術が駄目なら魔術で────そう考えたものの、高価な魔術陣には手が出ず、リゼラ様と同じく、魔法に目を付けたというわけです」

 ジグはそこで言葉を切り、オムライスを一口含む。それを咀嚼して嚥下すると、また続けた。

「ですが────リゼラ様とは違い、普通の人間だった俺には、自分の魔力を操作して魔法を施行することができなかったんですよね。だけど、その事実を知る由もなく────邸の裏に広がる森で不毛な修行をしていたところに、運よく森深くに存在していた精霊と出逢い────そして、俺は…、“精霊使い”となったんです」

 ジグは言葉を切って、オムライスの崩した個所をスプーンで掬って、ぱくりと口に入れる。

 “精霊使い”────初めて耳にする名称だ。

「それで?」

 ハンバーグをナイフで切り分けながら、レド様が先を促す。

「それでって───それだけですが?」
「いや、端折り過ぎだろう。どうやって精霊と出逢ったとか───どんな精霊だったとか、もっと何かあるだろう。
そもそも、その“精霊使い”とは何だ?どうやったら、なれるんだ?」
「前世の俺がどんな人物だったのかをお聴きになりたかったのでは?」
「…訂正する。前世のお前がどんな人生を送ったか、聴きたい」
「今、語った通りですが?」

 飄々と答えたジグに、レド様はイラっとした表情を浮かべる。


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