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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十八章―邂逅の果て―#3
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後片付けも済んでいそうなのに────不測の事態でもあったのかな。

「何かあったのか?」

 同じくラムルの様子に思うところがあったらしいレド様が、ラムルに訊ねる。

「旦那様とリゼラ様がお出かけになられた後、セレナの弟───バレスの意識が戻りまして」

 地下遺跡で保護して以来、バレスの意識は一度も戻っていなかった。

 バレスは使用人部屋の一室に寝かせていたが、古代魔術帝国仕様のベッドなので、心身共に回復するまで昏睡状態を保っていたのだろう。それだけ消耗が酷かったということだ。

「そうか…」
「ちょうど誰もいないときに目覚め、パニック状態となっておりましたが────セレナとヴァルト、ハルドが宥め、今はまた眠りについたところです」

「…セレナさんと会わせたのですか?」

 セレナさんは、父であったディルカリド伯爵と兄のことしか言及していない。

 だけど、『兄弟から愛されなかった』と言っていたし────ヴァルトさんの言にあった、“セレナさんをバカにする『あいつら』”の中に、バレスが入っていなかったとも限らない。

「大丈夫ですよ、リゼラ様。バレスがパニック状態になっていると知って、『姉である自分なら鎮めることができるかもしれない』とセレナが自ら言い出し、バレスの許へ行ったのです。ヴァルトが終始睨んでいましたし、バレスがセレナを傷つけるようなことはありませんでした。ですから───どうか、ご安心ください」

 私の心配を察したラムルが、目元を緩めて答えてくれる。

「そうですか…。それなら良かった」

 安堵しただけでなく、ラムルの気遣いに強張っていた表情が緩む。

「バレスに話を聴きたいところだが…、今日はもう遅い。明日以降だな」
「そうですね」

 おじ様の方も一段落着いて、ディルカリド伯爵とハルドの祖父───ドルトの尋問を始めたとのことなので、そちらから情報を得られるとは思うが────バレスからも、エルドア魔石の精製や魔獣に関して訊いておきたい。

 特に、あの黒いオーガについては、少しでも情報を集めておかなければと考えている。


「忙しいのにすみませんが────引き続き、バレスの世話をお願いします」

 皆、それぞれやることがあって忙しいのに、本当に申し訳ないけど────何せ、バレスは手足を失っている。誰かが援けなくては何もできない。

 ちょうど、野営することを視野に入れて、魔導機構【除去(クリアランス)】の魔術式をノルンに編み直してもらったところだ。

 多少、効能は落ちるものの、これで場所を選ばずに誰でも【魔術】として使用できる。入浴に関しては、これを使えば、そう手間にはならないはずだ。

 排泄に関しては───支給品の中に、ちょうどいいものがあった
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