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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十八章―邂逅の果て―#2
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ったので、ちょっと心配していたのだ。

「大丈夫です。ちょうどいい塩梅でした」
「そうですか。それでは────その杖は、ユリアさんに差し上げます」
「え?───よ、よろしいのですか?」

 セレナさんにはもう別の杖を渡しているから、その杖を使うことはない。アイテムボックスにしまい込むよりは、ユリアさんに使ってもらう方がいい。

「ええ。この皇都の危機に駆け付けてくれたお礼です。良かったら、役立ててください」
「そんな────私の方こそ、魔術陣を取り戻してくださった謝礼をしなければならないのに…」
「そのことなら恩に着る必要はありませんよ。偶然の賜物ですので。ですから、遠慮せずにもらってください」
「……ありがとうございます。大事に使わせていただきます」

 ユリアさんは柔らかな笑みを浮かべて、大事そうに杖を握り締めた。自然と私の口元も緩む。

「あ───もし、その杖が不要になって手放すときは、私に相談していただけますか?」

 現在の魔術師は、魔術陣が勝手に魔力を吸い取って発動してしまわないよう、魔力を徹さない魔獣の鞣革でできた巾着袋に入れておき、発動させるときだけ取り出し、発動し終えたらすぐにしまうという不便なやり方をしているらしい。

 これまで改善する工夫がなされなかったのは、おそらく、希少な魔術陣を所有していると余計な輩に悟られないため、隠し持つことを優先していたからではないかと思う。

 だけど、魔水晶(マナ・クォーツ)で魔術陣を作製することに成功して、冒険者ギルドで量産できるようになれば────希少なものではなくなり、隠し持つようなことをしなくてもよくなる。

 そうしたら、今度は発動しやすさが重視されるはずだ。

 魔術陣と併せて、こういった道具が普及したら、魔物や魔獣討伐ももっと楽になるかもしれない。

 魔術陣の量産に目途がついた際には、この杖と同じようなものを創ってサヴァルさんに持ち込もうかな───と漠然と考えているので、そうすると特許の問題とか出てくる可能性もある。

「いえ、大丈夫です!絶対に手放す気はありませんので!どんなに懇願されても、絶対に───絶対に譲ることはありえませんので!」
「そ、そうですか…?」

 ユリアさんは、拳を固めて、物凄く力強く言い切った。いや、そこまで大層な代物ではないのだけれど…。まあ、気に入ってもらえたのなら良かった。


◇◇◇


 合流したレド様と連れ立ってギルドを出ると────街はもう完全に夜闇に沈んでいた。

「ところで、リゼ───ユリアの話とは何だったんだ?」
「貸していた杖を返したかっただけのようです。あれから会えていませんでしたから」
「ああ…、そういえば貸していたな」

 レド様は、納得いったよう
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