§42 深淵の扉
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まれる超高位呪文の嵐を凌ぐ。正直限界に近い。しかも――
「よしよし。一気に殲滅じゃ!!」
意気揚々と宣言する大聖の傍には大猿。その数が尋常ではない。数千数万で足りるだろうか。宙高く打ち上げられた黎斗の視界は茶色の毛並で埋まる。この近辺一体すべてが猿天国。何をしたらこうなるのか。
「ぐぁ……」
思考に気をとられるたびに、死ぬ。自分相手に負けっぱなしなのは癪に障るが、現状では耐えるだけで精一杯だ。甘粕達の避難の進展具合を聞く余裕はもうない。このままではこちらが死ぬ。
「……ベストよりベター、か。甘粕さん馨さんすみません」
其れは敗北宣言だ。事態をひっそりと収束させることはもはや不可能。ならば。
「羽目外すか」
攻撃をいなして躱して避けながら、黎斗は決断する。
「我はただ、躯を以て命となそう」
祝詞を紡ぐ。
「我はただ、命を以て躯となそう」
猛攻にさらされている今、本来ならば紡ぐ時間などないだろう。しかし時間を未来に過去に跳ぶことで、言霊を語る時間を作る。
「輪廻する御霊を手繰り寄せ、偽りの刻を呼び戻し。ここは楽園。森羅よ我が意に沿え。醜き愛し子達よ。今一度の帰還を許そう。舞い、踊れ」
黎斗の身体から、濃密な死の気配が噴出する。
――――世界が、塗り変わる――――
「な――グッ!?」
動揺し呻くのは斉天大聖。死の世界は、主に従わぬ異物の命を奪おうとする。彼の底知れぬ耐性故に無事ですんではいるものの、命を蝕む重圧はそう楽なものではない。
「……流石に僕には効かない、か」
僅かに怯んだものの、黎斗達は即座に黎斗に襲いくる。
「じゃん」
呪符を爆発させて、距離をとる。周囲の様子を確認するも、石化した大猿が大量に見えるだけ。
「おぬし、何をした……!!」
憤怒の形相でこちらを睨みつける斉天大聖だが、黎斗の表情は通常そのもの。
「何をしたでしょう? ――っと、怖いおにーさん達の到着だよ」
冥府の主にして国土創世の女神。神々の母。彼女の能力は簡単に言えば死の世界を顕現すること。だが、それを解説してやるつもりはない。
「おおーっと。別嬪さんの発見だ。……久しぶりだなぁ、黎斗」
黎斗のおどけた声に被せる様に、別人の声が軽やかに響く。その声が黎斗を、苦虫を潰した様な顔に変えた。
「一番槍はお前かよ」
「なーに言ってんだよ。ダチの要請に真っ先に応じてやるなんて、俺様ってマジイケてねー?」
白衣をはらりと舞い踊らせて、軽やかに地に立つ学者然とした男。
「はいはい。イケテルイケテルー」
棒読みで相手をする黎斗に対し、いかにも傷ついた、とばかりに泣き真
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