§42 深淵の扉
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「把ァ!!」
気合一閃。そんな言葉がしっくりくるような声と同時に空間が歪む。周囲の事物を破砕しつつ広がる歪みは、硝子が砕けるかのように突如砕けた。その中心にいるのは一人の佳人。
「……これは驚いた。暫くは逃れられぬ封印の筈じゃったのだがのう」
目を丸くして頬をぽりぽりと掻く大聖。羅濠教主を侮っていたつもりはないが、まさかここまでとは予想外だ。
「ふむ。なれば少し遊んでやろうかね」
好戦的な笑みを浮かべて大聖は呟く。恵那を抜き取られたせいで、力が若干落ちている。力が黎斗と戦っていた時まで戻るには時間がかかるだろう。それまでは、暇だ。
「さぁ逝くぞ神殺し!! 桃の貯蔵は十分かぁ!?」
「お黙りなさいこの愚猿が!!」
如意棒を片手に、大聖は教主へ、大聖の分身は仁王力士へ挑みかかる。一撃。防がれる。一撃。避けられる。合間に受ける一撃。鋼を上回る四肢は無傷。
「どうした、どうした娘っ子!? 破魔の主はこれを凌いだぞ!?」
戦いを続けているうちも、斉天大聖の封印は少しずつ解けている。時間をかければかけるほど大聖は強さを増していく。対する教主は良く凌いでいるのだろう。邪眼が無いということは、斉天大聖の火眼金晴が猛威を振るうということだ。彼の大聖の両眼は、身体を麻痺させ自由を奪う。身体が思うように動かない現状で耐え凌いでいるのだからその実力は間違いなく武の至尊と呼ぶのにふさわしいのだろう。
「こ……この私を、舐めるのはよしなさい!!」
「ふははは!! 面白い。面白いぞ……!!」
苛烈な攻めを凌ぐ教主に機嫌を良くする斉天大聖。すでに体調は良好だ。竜蛇狩りに開放される時をも上回り、もうじき黎斗と打ち合った時と同等にまで力が戻る。
「さぁ。これはどうする?」
三面六臂。代わる代わる襲い来るは武器を超越した神宝。数合まではなんとか張り合うも、そこまでだった。臓腑を抉る一撃と共に吹き飛ばされる。脳天が瓦礫に直撃、瓦礫が微塵に砕け散る。
「……ぐっ」
「ふーむ。惜しい。が、やはりやつには今一歩及ばぬのう」
幾分かの哀悼を込めて、大聖は黎斗を偲ぶ。眼前の彼女も大成すれば全力の自分と打ち合えるかもしれないが、今はまだ青い。この可能性をここで摘み取るのは非常に勿体ないが、生かしておくのも面倒くさい。
「……お義兄様はどうしました」
その言葉が教主に黎斗の不在を気付かせる。
「あぁ。今頃は溶けてドロドロじゃないかの? ……この瓢箪、わしも危うく死にかけたし」
何気なく放った一言に、教主の怒気が爆発する。
「貴様!! よくもお義兄様を!!」
鋭さを急上昇させた教主の猛攻にさしもの大聖も後退を余儀なくされ数歩後ろに後ず
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