第二章
[8]前話
「危なかったわ」
「それは何よりね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「あんたの牛丼もう来てるのね」
「だって吉野家よ」
真紀子はそれでと話した。
「だったらね」
「すぐに来るのね」
「早い安い美味しいでしょ」
「吉野家はね」
「だからね」
それでというのだ。
「あんたがおトイレ行っている間に」
「来たのね」
「そうよ、けれどね」
真紀子はそれでもと話した。
「待ってたから」
「お箸つけてないわね」
見れば真紀子は箸を手にも取っていない。
「そうね」
「ええ、あんたの牛丼が来たら」
それならというのだ。
「その時にね」
「一緒に食べるのね」
「そのつもりで待っていたのよ」
「有り難う」
富美子は真紀子に微笑んで感謝の言葉を述べた。
「そうしてくれて」
「お礼はいいわよ、じゃあ食べましょう」
「私の牛丼が来たらね、ただ思えば」
富美子は微笑んだままこうも言った。
「女子高生二人が休日吉野家で牛丼を食べるなんてね」
「ちょっとないわね」
「それも制服でね」
「そうよね、けれどそれは」
「私がピンチだったからで」
「けれどピンチは脱したし」
「よかったわね、じゃあそのことをよしとして」
富美子は自分から言った。
「私の牛丼が来たらね」
「一緒に食べましょう」
「そうしましょう」
真紀子の言葉に頷いた、そして富美子の牛丼が来ると一緒に食べた。もう富美子はふつうにえがおになっていて脂汗も流していない。先程までの死にそうな顔は何処にもなかった。
死にそうな人の顔 完
2025・2・15
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