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不遇水魔法使いの禁忌術式(暁バージョン)
番外編1
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だろうかと思い心の中で自嘲し安堵を覚える。そんな中でも私は眠りから覚めることは出来ないししない。

そして暖かい手が私に延ばされた触れた。

彼が私に触れただけで封印のための鎖は砕け、溢れんばかりの魔力によって肉体は修復されソレにより剣が抜け落ちた。

私はその手がどうしても優しいモノのように思えて気がついたら目を覚まし彼に問うていた。

「あなたは誰?」

私の声は擦れてはいないだろうか、きちんと話せているのだろうか。少しずつ熱が奪われていっていく身体に抱えられる。人肌に触れ安らぎを覚えてしまうが私はその温度が消えていくのを感じる。血を流しすぎて最早焦点が合っていないのかもしれないでも私と彼の目は合った。

私を何か綺麗なモノを見たような、哀れなモノを見るような慈しみが混ざった視線。
私はそんなものではない。

「ああ…あなたの命は消えてしまいそうなのね」

私は『水』の魔法使い。治癒を命を救う術を仕込まれてもいたからどのような有り様なのか見てわかる。きっとこの少年はすぐに死んでしまうのだろう。……私が助けなくてはの話だけど。

「そんな有様なのに私を解放した…馬鹿な人」

本当に馬鹿な人だ。こんな場所に入り込んで、私のような得体の知れない筈のモノを解放して挙句の果てに命を落とそうとしている。……そんな状態なのに、それを分かっているはずだろうに私をそんな目で見てくるなんて…どうしてなんだろうか?

「私はあなたを助けることができるわ」
「……でもそれは今ここで命をなくすことより辛い道を歩むことになるかもしれない」

…私には目の前で倒れている彼を助ける手段はある。道具も準備もない今救うために出来ることそれは…私を経由して禁忌術式を彼につなげてしまえば良い。

私が封印され緩やかに禁忌術式を消しさることを選ぶのなら目の前の命を見捨てなくてはならない。
もし彼を私が助けることを選ぶのなら…私が自らの手で禁忌術式への責任を取らなくてはならない。

「それでも私を解放したあなたに問わなくてはならない」
「これは契約」
「新しい命をあなたにあげる。だから…私のために戦って…私のために血を流して」

でも私が彼を救うことを選ぶのであれば私はしばらく魔力の大半を使えなくなるだろう。そんな中で旅をして目的を果たすことは出来やしまい。

だから私の目的を果たすのならきっと彼に戦って貰わなくてはならない。私が彼を助けるのであれば彼を死へ向かわせる必要がある。

「私のために死んで欲しい」

なんて矛盾だ。こんなことを言い放つ私なんて碌な女ではないのだろう。
そんなことを言った私の手を彼は躊躇いなく掴む。

「そっか」

私はこの力も碌に入っていない血に汚れた私と繋がれた手をじっと見る。
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