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ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
第22話:吹き荒れるタイフウ
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ものだった。
一体どういうことか、そう思っている小狼の姿が目に入り、男が形相を変えて叫ぶ。

「馬鹿、見せていいもんじゃねえよ!」

男は小狼の手に持っていた手袋を無理やりひったくる。
いきなりの豹変ぶりに驚くサクラや子供達……その中で士だけが床に広がった小さな黒い血溜まりを見て、口を開いた。

「リジェクション……拒絶反応による影響か。この黒い血も身体から出てきたもんなんだろう」

「チッ……、こんなもの、刺激が強すぎるだろ?」

「なるほど、大体わかった。こいつらが仮面ライダーとは言っていたが、お前、改造人間のタイプだろ」

「……そうだよ、お前の言う改造人間ってやつだよ。どこぞの悪の組織に身体弄られて、逆らった挙句の果てに死の淵を彷徨ってる哀れな裏切り者(ダブルクロス)さ」

士に対して横暴気味に答えながら、自嘲的な笑いを浮かべる。
やさぐれているような男の様子に子供達のうちの麻里奈が心配そうに見つめる。

「仮面ライダーのお兄ちゃん……」

「ほら、ここはあぶねぇから怪我したくなかったらさっさと……」

子供達に対してこの場所から去るように告げようとする男。
だがそれを遮るかのように、目の前に突き出されたのはコンビニのお握りだった。
男があっけにとられたような表情でしていると、小狼が話しかける。

「とりあえず、離れるにしても休むにしても、これを食べてからにしませんか?」

「……は?」

「その、お腹空かしてるんじゃないかと思いまして」

「お前、怖くないのか? 黒い血なんか流す人間の姿がいた化け物なんてのが目の前にいて」

眉を顰めながら男は小狼に訊ねる。
自分のような尋常ならざる力を持っていたら、誰しもが恐れる。
だがそれを覆すかのように小狼は男へ告げる。


「子供達を心配しているあなたをどうしても悪い人とは思えなくて……優しい人なんですよね、あなたは」


その言葉を聞いて、男の脳裏に浮かんだのは、とある人物の光景。
―――命は美しいと信じて、どこまでも愚直で真っ直ぐな男。
背丈も格好も全く違うのに、何処となくあの男とそっくりだと嫌でも実感する。
そのことに気付いた男は思わず吹き出して笑った。

「たっく、どこぞのお人よしを思い出させてくれるよ」

「えっ……?」

「なんでもない、こっちの話だ」

男は奪い取らんと勢いでお握りを掴むと、包装を破きながら食べ進める。
険悪な雰囲気からいい雰囲気に一転した事に子供達は安堵し、サクラはにこやかな笑みを浮かべる。
その後、手当を終えて食事に有り付く男へ小狼達は自己紹介を始める。

「そういえば、名前名乗っていませんでしたね。おれは小狼です。こっちが……」

「サクラです」


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