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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
本当の自立に向けて
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トする気ない? さっき、お母さんから電話で頼まれたんだけど」

「バイト? ってどんなバイト?」

 ある週末の午後。部屋で誰かからの電話を受けていたらしいさやかが、通話を終えてから勉強スペースでパソコンを開いて執筆していた愛美に声をかけてきたのだ。
 ちなみに、ここに珠莉はいない。治樹さんとデート中である。もし彼女がここにいたとしても、さやかは彼女に声をかけなかったと思うけれど。

 愛美は内容にもよるけれど、引き受けてもいいかなと思っていた。作家として原稿料はもらえるようになったけれど、まだまだ金銭的余裕はない。それに、あしながおじさん≠ノ出してもらった学校と寮の費用を返そうにもまだ全然足りないのだ。

(純也さんにだって、デートのたびにお金出してもらってるし。この経済格差が恨めしい……。もっとボンと稼げたらいいのに。本が出版されて、印税がまとめて振り込まれてくるとか)

 ちなみに、作家デビューしてから愛美は初めて銀行に自分名義の口座を開設した。あしながおじさん≠ゥらのお小遣いは相変わらず現金書留で送られてくるけれど、原稿料は銀行振り込みなのだ。

 ――それはさておき。

「あのね、家庭教師(かてきょー)のバイトなんだけど。()(やま)に住んでるお母さんの知り合いが、来年高校受験を控えてる上の娘さんの勉強を見てくれる人を探してるんだって。あ、下の娘さんも一緒にね。でさ、最初はあたしにってこの話が来たんだけど、あたしじゃちょっと人に教えるの自信なくて。……ほら、学校の成績が……ちょっと」

「なるほど。それで、わたしにってこと?」

「そういうこと。一ヶ月間の泊まり込みなんだけど、自由な時間もいっぱいあって。謝礼は一ヶ月で十万円出すって」

「十万も? わたしなら、五万でも『いいのかなぁ』って思っちゃうけど」

「だろうね。愛美は金銭感覚しっかりしてるからねー。でも、先方さんが『十万出す』って言ってくれてるんだから。すごくいい人だよ。ただ、娘さんたちが全っ然勉強やる気になってくれなくて困ってるんだって言ってた。……で、どうする?」

「わたしは引き受けたいけど、おじさまが何て言うかな……。返事、急ぐの?」

 十八歳といえば、アルバイトをするのに保護者の許可を取る必要はないけれど。一応、あしながおじさん≠ノは伺いを立てた方がいいかもしれないと愛美は思った。

(まあ、純也さんだってわたしが自立しようとしてるのをジャマしたりしないだろうけど。一応念のため)

「そんなに急ぎの話じゃないから、おじさまにも相談して、それから返事くれても全然オッケーだよ。それまで返事待ってもらえるように、あたしからお母さんにも言っとくから」

「うん、分かった」

「でも、愛美、ゴメンね。
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