暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
大事な人とのバレンタインデー @
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おじさん=¥ヶ轤ウんなのは彼女の中で確定しているので、彼の分も用意するとなると、最終的に純也さんが二人分を受け取ることになってしまう。それはそれで迷惑だろうか?

(だからって、おじさまの分を用意してなかったら怪しまれそうだしな……)

 この段階で、彼に「正体がバレてしまったんじゃないか」と思われるのはどうなんだろうか? 逆に「どうして気づかないフリをしていたのか」とツッコまれてしまうかもしれない。

「……何を悩んでるんだ、愛美ちゃん?」

「…………えっ? あー、うん。バレンタインデーの贈り物、田中さんの分をどうしようかなーと思って」

「ああ……、なるほど」

(……あ、純也さん、悩んでる悩んでる)

 これは彼にとって難題だろう。田中氏と自分は別人ということにして二人分受け取るか、それとも自分はもらえるので田中氏としての分は断るのか。……もし断れば、自分があしながおじさん≠セと分かってしまうかもしれないのだから。

(……っていうかわたし、もうとっくに分かってますよー。言わないけど)

「…………多分、彼はそういうの、受け取らないんじゃないかな。別に愛美ちゃんからのお礼とか、そういう見返りみたいなのが欲しくて援助してるわけじゃないだろうし」

(……あ、上手いこと逃げたな)

 当たり障りのない、無難な言い訳をしてきた純也さんに、愛美はそう思った。
 これで彼は二人分の贈り物を受け取らずに済むし、田中氏と自分を別人だと愛美に思わせることもできたから。

(でもまあ、ここは純也さんを立てて、そういうことにしといてあげようかな)

「……そうだね。分かった。じゃあ、おじさまの分は要らないか」

 愛美と純也さん、それぞれの思惑(おもわく)は違うけれど、バレンタインデーの贈り物は純也さんの分だけ用意すればいい、ということでこの話の結論は出た。


   * * * *


 ――今年の紅白歌合戦は(あか)組の勝利で幕を下ろし、純也さんがTVのチャンネルを変えた。ここで放送されている音楽番組は、途中で年越しのカウントダウンが行われるらしい。

「……あ、このバンド、紅白とは違う曲歌ってる」

「うん、ヒット曲多いからなぁ」

 ロックバンドやアイドルグループ、ソロの歌手などが次々と登場して歌を披露し、いよいよ新年へのカウントダウンが始まった。

『……五、四、三、二、一、ゼロ! ハッピーニューイヤー!』

 新しい年を迎えた瞬間――、愛美は純也さんからキスをされた。

「…………え?」

「今年最初のキスだね、愛美ちゃん。明けましておめでとう」

「……………………うん。あ……明けましておめでとう」

 バカップルのお手本みたいな新年の迎え方を
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