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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十八章―邂逅の果て―#1
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────それでも、利用することを止める気はなかったようだ。
後半の記述には、何としてでもカイバルス王国を退けねばという、ディルカリダ側妃の強い思いが滲み出ていた。
エルダニアという国ではなく、バナドル王を護りたいという────強い思いが。
視察に赴いたバナドル王がディルカリダ側妃を連れ帰ったという文面と、バナドル王がディルカリダ側妃よりかなり年上ですでに3人の妃がいた事実、加えてディルカリダ側妃が美しかったという記述から、何となくバナドル王が一方的に見初めて連れ帰ったような印象を持っていたが────記述を見るに、禁術を利用してまで護ろうとするくらい、ディルカリダ側妃はバナドル王を大切に思っていたみたいだ。
だからといって、ディルカリダ側妃が禁術に手を出して、多くの人を巻き込んだことは許されることじゃない。おそらく、“記憶持ち”が生まれるようになったのは、これが原因だ。
レド様と出逢う前の私ならば、非難していたかもしれない。
けれど、今の私には────何に換えても大切な人を護りたいという気持ちは、痛いほど解る。
もし…、もしも、レド様を護るためにはそうするしかないとなったら、私もきっと────
「っ?!」
不意に後ろから抱き抱えられて、思考に没頭していた私は驚いて振り向いた。
「…レド様?」
いつお帰りになられたのだろう。それに、ネロもヴァイスもカデアも、いつの間にかいなくなっている。
「どうした、リゼ。何か思い悩んでいるのか?」
レド様は私を自分の膝に載せて、心配そうな表情で覗き込む。いつだって私を案じてくれるレド様に、胸が熱くなる。
「いえ…、ただ────レド様が傍にいなくて寂しかっただけです」
「リゼ…」
「お帰りなさい、レド様」
私の言葉に、レド様は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ああ、ただいま───リゼ」
その笑顔を見て、私は胸が締め付けられるような感覚を覚える。
二人きりという状況もあり、何だかレド様の温もりをもっと感じたくなって────レド様の広い背中に腕を回して、その胸に頬を寄せた。すぐに巻き付いたままのレド様の腕に力が入った。
頭に口づけられて顔を上げると、今度はこめかみに口づけられた。私は、無意識にレド様を仰ぎ見る。レド様が熱の籠った眼差しで私を見下ろしていて────視線が交わる。
レド様が腕を緩めて身を屈め、私に顔を寄せる。私が瞼を閉じようとした、そのとき────ふと視線を感じて、私は振り返って固まった。
そこには、”アルカイックスマイル”のような───何とも微妙な笑みを浮かべて、ラムルが佇んでいた。
「……無粋だぞ、ラムル」
不機嫌そうに言うレド様には、驚いた様子はな
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