二巻
十一話
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ャルルは笑った。
「此処までして逃げきれると思ってるほど僕は馬鹿じゃないし、こんなことをしてすべてをさらけ出すことのできない下衆な人間にはなりたくない」
そういうとシャルルは全ての事を話した。
自分が妾の子である事。デュノア社が経営危機に陥っている事。第三世代機の開発に手間取っている事。
そして、自分が男としてこの学園にやってきた理由。広告塔と一夏や私の男性IS起動者のデータ取りと、私の機体である第三世代機のプロトタイプのデータを盗みに来た事。
彼女がすべてを話し終えた時、少しすっきりとした表情を浮かべた。
「まあ、こんなところかな。……きっと僕はこれで強制送還されるし、デュノア社は潰れるか他企業の傘下に入るかだろうけどそれはまあ僕には関係ない事だしね。今まで騙していてごめん。でも全部喋ったらなんか気が楽になったよ。聞いてくれて有難う」
すっきりとした顔に見えたそれは、瞳が絶望の色に塗れていた。
私としてもこんな形で終わらせたくないと考えていたのだが、どうやらそれは一夏も同じだったらしい。
「いいのか、それで」
「えっ……?」
「それだけでいいのか、そんなんじゃやっていけないだろう。親のせいで自分の人生壊して、そんなことが許されていいはずがない!」
とても感情的な口調で話す一夏。そういえば彼も親がいなくて苦しんだ子だった。
「親がいなければ子は生まれない。だからって親が子供をいいように利用していいはずがない!俺たちは人間だ。知性も意識もある血の通った人間のはずだ!それをこんな終わり方にさせてたまるか!」
「い、一夏……?」
「一夏君、少し落ち着いて」
熱が入った声を私がなだめる。シャルルは困惑している様だ。まさかこんなにも親身になってくれるとは思いもよらなかったのだろう。
「……はぁ。悪い、つい熱くなっちまった」
「いいけど……なんで?なんで一夏はそんなに怒るの?」
「俺さ、親がいないんだ。千冬姉と二人っきりなんだ。捨てられたんだよ」
「あ……」
「ちなみに私も孤児だ。だから親については深くは言えないな」
だが捨てられる子供の気持ちはあの場所で見た。そして利用されていく末路も。
「その……ごめん」
「シャルルが謝る事じゃないだろ。俺も家族は千冬姉だけだから、今更親に会いたいって気持ちも無いし。それよりシャルルはこれからどうするんだ?」
「どうって、時間の問題かな……そのうち代表候補生を下ろされて、運が良ければ牢屋に入っておしまい」
「それでいいのか?」
「良いも悪いも、仕方が無いよ。僕に選ぶ権利はないんだから……」
「いや、違う」
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