二巻
十一話
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、シャアも。……先に戻っててって言ったよね」
「えっと、ごめん」
「ああ、すまなかった」
今度は私達がシャルルに気圧される事となった。何をそんなに怒っているのだ彼は。
「それよりさ、大浴場が使えるようになったんだって!」
「そう」
一夏の興奮気味な言葉にもそっけなく返すシャルル。余程機嫌が悪いように見える。
「ああ、そういえば織斑君にはもう一件用事があるんです。ちょっと色々書いてほしい書類があるので職員室まで来てもらえませんか?白式の正式な登録に関する書類なので少し量が多いんですが」
「わかりました。じゃあ先はいっててくれよ、シャアとシャルル」
「いや、私も図書室から借りていた本を返さなければならない。次の本も探したいしな、今日はシャルルが一番最初に浴びてくれ」
「うん、わかった」
「じゃ山田先生、行きましょうか」
そう言って一夏は山田先生と一緒に歩いていく。私も図書室に向かって行った。
そうしてシャルルは一人になった。
……今覚えばなんと私は間抜けだったのだろうか。
変声期を過ぎているにしては高すぎる声に私達に一向に肌を見せない理由。
それを知るのは、私が再び自室に帰って来た時であった。
「…………。はあ……」
自分でも嫌になる。
ドアが閉まり、ため息を吐き出した。
こうして自室に入るまでため込んでいたものは思ったより大きかったらしい。
自分でも驚くそれは、部屋の中に嫌な気持ちと共に充満してるように思えた。
「何やってるんだろうな……」
自分でやっていて恥ずかしい。あれほど怒るものだっただろうか、あの時の一夏の行動は。
まさか、こんなにも惚れやすいのか自分は。
「……シャワーでも浴びて落ち着こう」
いっそ寒いくらいに冷たい水を浴びようと思い、僕はクローゼットを開けた。
「いやはや、今回も面白そうな本が手に入った」
手に取っているのはNo Longer Human。太宰治先生の代表作の一つである。
直訳すると人間ではないという意味になる其れは、一体どの様なものなのか。
楽しみながら自室のドアを開けると────
「きゃあっ!」
────明らかな女性の叫び声がした。
「……何をやっているのだ一夏君!」
すわ男女のもつれかと急いで声をのもとに行くと。
「……えーっと…………」
「…………」
そこには一夏と、明らかにボリュームのある胸をもったシャルルがいた。
「……ボディーソープ、置いとくから」
「……うん」
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