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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
初デートと初長編 A
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る。この恋が始まったキッカケを、彼に打ち明けたことは今までなかった。

「……いや、分からないな。教えてくれるかい?」

「純也さん、初めて学校を案内した時に、わたしの名前を褒めてくれたでしょ? あと、会ったこともないわたしの両親のことも。だからわたし、純也さんのこと好きになったんだよ」

 愛美自身も、あの頃はまだ亡くなった両親から愛されていたかどうか自信がなかったので、純也さんに言われた言葉で救われたのだ。今は自分が確かに両親から愛されていたんだと思えるし、両親の愛に報いるような生き方をしようとも思える。

「あれがキッカケで……? 俺はごく普通のことしか言ってなかったつもりだったんだけどな」

「ううん。わたし、あの時までは誰かからそんなふうに言われたこと、あんまりなかったから嬉しかったの。だからだと思う。純也さんのこと、すごく好きになったのは。……だから、ありがとう」

「そう……だったのか」

「うん。そうだったんだよ」

 そして彼は、色々な場面で愛美のことを気にかけてくれている。インフルエンザで入院生活を余儀なくされた時には、お見舞いにキレイなフラワーボックスを送ってくれた。心のこもった手書きのメッセージカードを添えて。あんなに失礼極まりない手紙を書き送ったにも関わらず。
 それはあくまであしながおじさん≠ニしてしてくれたことで、愛美もその頃はまだ彼がしてくれたんだとは知らなかったけれど。

 でも、愛美はまだ純也さんに「あなたがあしながおじさん≠ナしょう」と追及するつもりはない。なぜなら、愛美のことを(あざむ)き続けていることにいちばん良心の()(しゃく)をおぼえているのは誰でもない彼自身だと分かっているから、彼の方から本当のことを打ち明けてくれるまで待っていることに決めたのだ。

(気づかないフリをするのもまた、一つの勇気なんだよね……)

「――俺が愛美ちゃんを好きになった理由は、前にも話したよな。君は俺のことを家柄とかステータスでじゃなくて、一人の人間として、一人の男としてちゃんと見てくれてるから。それまで出会ってきたどんな女性とも違うと思った。それで珠莉と同い年の、十三歳も歳下の女の子だと頭では分かってても好きだっていう気持ちは止められなかったんだ」

「うん」

 だから彼は、ヌン活の時にあんなことを言ったのか。あれはきっと、愛美に言っているようで自分自身にも言い聞かせていたんだろう。

「純也さん、わたしとの年の差のことは気にしなくていいよ。わたし、四月で十八歳になるの。つまり、法律上は成人ってことだから、付き合ってても何の問題もなくなるんだよ」

「ああ……、そっか。う〜ん、でも法律上は問題なくなっても、珠莉がどう思ってるかな……」

「珠莉ちゃ
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