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トップシークレット☆桐島編 〜お嬢さま会長に恋した新米秘書〜
思い込みと誤算、そして @
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 ――その日も週末だったため、僕はすっかり絢乃さんに失恋したものと思い込んでしまったまま実家に帰った。

「ただいま……」

「貢、おかえりなさい。……どうしたのあんた、この世の終わりみたいな顔してるけど」

 リビングで出迎えてくれた母は、背中にキノコでも生えていそうな僕を見てそんなコメントをした。どうでもいいが、実の息子相手に何という言い草だろうか。いや、他人にそんなことを言う方が問題だが。

「今日、バレンタインデーでしょ。なのにそんな縁起の悪い顔して。……今年はチョコ、ひとつももらえなかったの?」

「いや、そんなんじゃないけど……。チョコなら今年もドッサリ」

「おう、貢。おっかえり〜♪ ぅおっ、今年もチョコ大量だなー。ま、オレには負けるけどな」

 続いて顔を出した兄が、ローテーブルの上にドサッと置いた紙袋を見て能天気にそんな自慢をぶっ込んできた。誰も兄貴(アンタ)のもらったチョコの数になんか興味ねえよと毒づきたくなる。こっちはそれどころじゃないというのに。……元はと言えば自分が()いた種だが。

「…………へぇ。こんなに大量のチョコ、俺一人じゃ食べきれないからみんなで分けていいよ。兄貴も好きなだけ持ってっていいから」

「えっ、マジでいいのかよ? お前、くれた子たちに申し訳ないとかそういう気持ちはねえのか?」

「別に、どうでもいい」

 いちばん好きだと思っていた絢乃さんにふられたと思い込んでいた僕は、不機嫌に吐き捨てた。……が、僕はすっかり忘れていた。帰宅時になって、絢乃さんから頂いた分まで一緒に紙袋へ放り込んでいたことを。

「…………あれ? これ一個だけなんか手作りっぽいのあるけど。これ、もしかして絢乃ちゃんから?」

「………………だぁぁぁ〜〜〜〜っ!? 兄貴っ、それだけはダメ!」

 僕はハッとして、兄からギフトボックスを引ったくった。

「これは、俺の! 絢乃さんが、俺のためにわざわざ手作りしてくれたんだよ!」

 大事に大事に箱を開けると、見るからに手の込んでいそうなチョコレートが六粒、茶色い紙のカップに収まって入っていた。プロのショコラティエが作ったもののように見えたが、お菓子作りの得意な彼女ならこのクオリティーでも頷けた。

「あ、それ六個も入ってんじゃん。オレにも一個くれよ」

「ぜってーイヤ! これは俺が全部食うの! 感想聞かせてって言われてるし」

 僕はそう言ってから気がついた。……そうだよ、絢乃さんは俺のことが好きだってハッキリ分かったばっかりじゃん。なんでふられたなんて勝手に思い込んでたんだろう……。

「――ところで貢、あんたゴハンは? 今日は寒いからクリームシチューにしたんだけど」

「うん、腹減ってるからすぐ食うよ。
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