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トップシークレット☆桐島編 〜お嬢さま会長に恋した新米秘書〜
抑えきれない想い A
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 ――一月末、絢乃会長が取材を受けた報道番組がTVの全国ネットで放送された。
 僕を除く社員や幹部の人たちの顔にはちゃんとぼかしが入れられており、会長と僕が心配していたプライバシー保護もきちんとなされていたので、さすがはプロの仕事と二人で感服したものだ。
 SNSでは――いい意味でも悪い意味でも騒がれることもなかったので、これは喜んでいいのか悲しむべきことなのか……。
 でも、このTV取材が要因となったのか、取引先が数社増えたことは大きな反響といえるかもしれない。TVで絢乃会長の誠実さに触れ、ぜひとも篠沢商事と仕事がしたい、と言ってきたのだ。
 
「ほらね、桐島さん。TVのインタビュー、受けてよかったでしょ?」

 会長は嬉しそうに、そして若干得意げにこうおっしゃっていた。――「多くの人の目に晒されるのは苦手だ」とおっしゃっていたのはどこのどなただったでしたっけ?
 とはいえ、まさかこんなに早く仕事の成果に直結するとは思ってもいなかったので、確かに取材を受けたことは正解だったのだろう。絢乃会長さまさまである。


 ――そんなことがあっての二月初旬。絢乃会長に篠沢グループの化粧品メーカー・〈Sコスメティックス〉のCM出演のお話が来た。春の新作ルージュのCMにぜひ出てほしい、と。
 彼女はコスメを始め、スキンケアからヘアケア、ボディケアに至るまでこのブランドを普段から愛用されており、僕は当然、彼女がこのオファーを受けられるものと思っていた。
 ところが、給湯室へお客様――〈Sコスメティックス〉の販売促進部と広報部の部長さんらしく、どちらも三十代くらいの女性だった――と会長のためにお茶を淹れに行っていた僕が会長室へ戻ると、思わぬ展開が待っていた。

「き……っ、キスシーン!?」

 それまでの話の流れを僕は知らなかったのだが、絢乃会長が素っ頓狂に声を上ずらせていたのだ。それも、僕が耳をダンボにしたくなるような単語を叫んで。……何ですと!? キスシーンとな!?
 どういう話の流れでそうなったのかと僕が首を傾げると、会長は何だか気まずそうにモジモジし始めた。そして、「キスシーンがあるならこの話はお断りします」とおっしゃったのだ。
 ……これはどういうことだろう? たったそれだけの理由で、愛用しているコスメブランドのCM出演を断ってしまわれるなんて、何というか絢乃会長らしくないなと僕は思った。
 でも、絢乃さんにはどうも恋愛経験がなかったらしいので、もしかしたら初めて好きになった人に申し訳なくてお断りしたのかもしれないな、とも思った。


「――どうしてCMの話、お断りしたんですか?」

 〈Sコスメティックス〉からのお客さま方がお帰りになってから、僕は応接スペースで冷めたお茶をお飲みになっていた絢乃会長に訊ねた。この
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