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トップシークレット☆桐島編 〜お嬢さま会長に恋した新米秘書〜
オフィスラブ、スタート! B
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――僕は絢乃会長と加奈子さんのお二人をステージ側面のドアからホール内へ誘導し、バッグとコートをお預かりした。
スピーチの原稿は「この内容で大丈夫」とすぐにOKを頂いたが、絢乃さんはカーテンで仕切られた向こう側にズラズラと詰めかけていた大勢のメディア関係者に緊張されているようで、制服のスカートの裾をギュッと握りしめられていた。
「――絢乃さん? もしかして緊張されてます?」
僕はあえて「会長」とはお呼びせずにお名前で呼び、彼女に声をかけた。会長としてのプレッシャーと必死に戦っておられる人を追い詰めてしまうようなことはしたくなかったのだ。
すると、彼女は会場にあるカメラの向こうにいるであろう何万人、何十万人という人たちのことを気にされているようだった。元々人前に出ることがあまり得意ではなく、パーティーの締めの挨拶で少しは克服できたものの、さすがにあの時とケタ違いの人々から注目されている状況は怖くてたまらなかったのだろう。
「う〜ん、なるほど……。僕、こういう時によく効くおまじないを知ってますよ。よろしければお教えしましょうか?」
子供の頃から極度のあがり症だった僕にも彼女の気持ちはよく理解できたので、僕は彼女に母直伝のおまじないを伝授して差し上げようと思い立った。大人になった今では、ちょっとバカバカしいとも思っているので少々恥ずかしくもあったが。
「はい。子供の頃に、母から教わったベタなおまじないなんですけど。『目の前にいるのは人間じゃなく、カボチャだと思え』だそうです」
「カボチャ……。確かにベタだね」
それを聞いた途端、彼女は
朗
(
ほが
)
らかに笑い出した。母さん、やっぱりこのおまじない、ベタベタすぎるって……。でも、絢乃さんが笑って下さったからいいか。
そして多分、彼女の中で僕の好感度は爆上がりしたはずだ。別に計算したわけじゃないが。
「ありがと、桐島さん。もう大丈夫! 貴方のおかげで、おまじないなしでもやれそうな気がしてきた」
僕の想定とは違う形ではあるものの、彼女の緊張を解すことができたので、僕の秘書としてのスタートは上々と言っていいだろう。特別何をしたというわけでもないが。
司会進行を務める久保の呼びかけを受け、加奈子さんとお二人でステージへ向われる新会長の背中はすごく頼もしく見えた。
絢乃新会長の就任スピーチを、僕はステージ横で見守っていた。
時に原稿どおりに、時にはご自身の言葉で語られる彼女の姿は本当に凛々しく、それは彼女だけでなく僕も待ち焦がれていた瞬間だった。彼女はまさに、この瞬間のために生まれてきた人なんだと思えた。
僕が驚いたのは、亡き源一氏が絢乃さん個人に宛てた(後から知ったことだが加奈子さん宛てのもあったそうだ)遺書を遺されていた
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