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トップシークレット☆桐島編 〜お嬢さま会長に恋した新米秘書〜
リミット B
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くら今の抗ガン剤が優れていて、副作用もほとんど出ないとはいえ、源一会長の命は確実に削られていたのだから。……その証拠に。

「……もう、わたしもママも覚悟はできてるの。パパは十分頑張ったんだから、旅立った時は『お疲れさま』って見送ってあげようね、ってママと話してて」

 そう言った彼女の目は、少し潤んでいた。「覚悟はできている」と口ではおっしゃっていても、きっと心の中では葛藤があったに違いない。努めて明るい口調にしていらっしゃったのは、僕に心配をかけまいと気を遣っていたからだろう。

「……って、なんかゴメンね! 今日はこんな湿っぽい日じゃないよね」

 そう言ってまだ強がる彼女が、僕には何だかとても痛々しく見えた。僕に気を遣わなくてもいい。無理に笑ったりしなくていいのに……。 
 どうして僕はまだ絢乃さんの彼氏じゃないんだろうと、恨めしく思ったことを今でも憶えている。彼氏だったら、「強がらずに泣いていいんだ」と彼女をそっと抱きしめることもできたのに。

「絢乃さん……、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫! ――あ、ここがリビングダイニングね。どうぞ」

 月並みの言葉しかかけられなかった僕に、彼女はカラ元気で答えた。もっと気の利く言葉は出てこなかったのかよ、俺。情けない。

 パーティー会場に入ると、すでに車いすに座られた源一会長がいらっしゃっていて、絢乃さんの親友だと思しきショートボブカットの女性にサンタ帽を被らされていた。彼女は水色のタートルネックに黒いデニムのミニスカート、黒のタイツというスポーティーなファッションで、身長は百七十センチ近くありそうだと僕は感じた。

「会長、今日はお招き頂いてありがとうございます。お邪魔させて頂きます」

「桐島君、堅苦しい挨拶は抜きにしよう。よく来てくれたね、ありがとう。楽しんでいきなさい」

「はい」

 会長が温厚な笑顔で僕を歓迎して下さったおかげで、僕の緊張はどこかへ吹き飛んでしまい、なぜだかリラックスした気持ちになった。というか、緊張の対象が会長からそこにいるショートボブで長身の彼女に移った、というべきか。
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