第三章
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「他にもな、美形の人がな」
「吸血鬼になってるんだ」
「在原業平さんなんかどうだよ」
「ああ、六歌仙の」
「あの人滅茶苦茶男前だったよな」
「日本の歴史でも有名な」
「物語の主人公になる位のな」
伊勢物語の主人公であるとされている。
「だったらな」
「それならだね」
「なってないか?」
「じゃあ京都に行ったらおられるかな」
「いたら面白いな」
「そうだね」
二人で笑ってこんな話をした、だが。
ここでだ、池山は里中に嗤ったままこう言った。
「俺達大阪だしな」
「伊勢物語にも出て来るね」
「だったらな」
「業平さんとも縁あるね」
「だったら来るかもな」
「業平さんが吸血鬼だったら」
「そうだったら面白いな」
こう言うのだった。
「それで人の血は美味いか」
「聞きたいね」
「そうだったらな」
笑いながらこんなことを話した、だがだった。
彼は吸血鬼が本当にいて襲われたらと思い意図的に大蒜を使った料理若しくはチューブのそれをかけたものをだった。
食べていった、その中で高校の授業が終わるとアルバイトでコンビニの店員もやっていた。そしてある休日だった。
店のレジの前にいるとだ、不意に。
平安時代の礼装、見事な青と白のみらびやかに輝くそれを着た眉目秀麗の青年が入ってきた。池山はその男を見て言った。
「えっ、まさか」
「先日噂をしていたであろう」
男はきらきらと輝く笑顔で言ってきた。
「私のことを」
「在原業平さんですか」
「今の呼び名ではそうなるな」
男も否定しなかった。
「私は」
「今ではですか」
「かつては官位で呼ばれるのが常であった」
「業平さんとは呼ばれないで」
「うむ、だが今は今だ」
「業平さんってお呼びしてもいいですか」
「うむ」
業平は優雅に微笑んで答えた。
「左様だ」
「それじゃあ」
「さて、他に客も店の者もここにいないので来たが」
「はい、それでご用件は」
「わかっておろう、吸血鬼の話だ」
業平はそちらだと話した。
「私がそれではないかとな」
「言いました」
「まずは違うと言おう」
「吸血鬼になっていませんか」
「恋に破れたり色々あったが」
「生きておられた頃は」
「別に血が飲みたいともな」
その様にもというのだ。
「思ったこともないし未練や名残があったが」
「そうでしたか」
「その生を終える時な、しかしな」
それでもというのだ。
「吸血鬼と呼ばれる位にはな」
「ありませんか」
「あれは夜叉ではないか」
「夜叉?仏教の」
「吸血鬼はな、事実最初はそう呼ばれていた」
夜叉と、というのだ。
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