暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
初デートと初長編 @
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座≠ニいう街は、行ったことはないけれど何となく高級なイメージがある。愛美のような一般人、それもまだ高校生が行くのはどうもその街にそぐわない気がして仕方がないのだ。

「いや、最近はそうでもないよ。若者向けの複合ビルとか店も増えてきてるからね。それに、愛美ちゃんが書こうとしてる小説の話を聞いてると、銀座が主人公のイメージにいちばんしっくりくるかな、と思ってさ。つまり、俺がそういうイメージってこと?」

「べっ、別に純也さんがそういうイメージってワケじゃ……。確かに似合いそうだけど」

 (あー……、これじゃフォローになってないな)

 フォローしたつもりがドツボにはまってしまい、ひとり落ち込む愛美だった。

「…………そういえば純也さん、今日はダウンジャケットじゃないんだね。昨日は着てたけど」

 気を取り直し、話題を変えた。

「さすがに、銀座へ行くのにダウンはなぁ……と思ってさ。愛美ちゃんはどっちの俺が好み?」

「わたしはどっちも好き。こういうキチッとした純也さんも、年相応にカジュアルな純也さんも」

 そういえば、彼のコート姿を見たのはこれが初めてだったなぁと愛美は思った。寮へ遊びに来てくれたのは春先だったし、千藤農園で一緒に過ごしたのは夏だった。
 あしながおじさん≠ニして施設で後ろ姿を見かけたのは秋で、あの時はまだそれほど寒い時期ではなかったのでコートは着ていなかったと思う。

「そっか、どっちも好きか。ありがとう、愛美ちゃん。俺、コートを着るのはなんかオッサンっぽくて自分ではちょっとイヤだったんだよな」

「そんなことないよ。純也さんは背が高くてスラっとしてるから、モデルさんみたいに何着てても似合っちゃうんだもん」

「……そう、かな? 最高の褒め言葉ありがとう」

 純也さんはちょっと照れくさそうだった。でも、愛美はお世辞抜きに本気でそう思っているのだ。

「――あ、そうだ。昼食は軽めに済ませようと思ってるんだ。その後のお楽しみのためにね」

「そうなの? っていうか、そのお楽しみ≠チて何? ますます気になるなぁ」

 そのお楽しみ≠ヘ、昼食を軽くすることと何か関係があるんだろうか? 何か美味しいものが食べられる……とか?

「じゃあ……ヒントを一つあげよう。若い女性の間で流行ってる、ちょっとオシャレなことだよ」

「えー、何だろう?」

 高校に入学した当初は流行に疎かった愛美も、スマホを使いこなせるようになってからはだいぶ追いつけるようにはなってきた。そんな愛美に分かるようなことだろうか?

(まだ分かんないけど、やっぱり楽しみ)

 とはいえ、純也さんがおかしなところへ愛美を連れていくわけがないので、きっと楽しめるところなんだろうと予想はついた。

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