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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
華麗なる一族? A
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んだろう、と。

「――ところで、両親の愛情に恵まれなかった子って、わたしが育った施設にもいたんだよね」

 珠莉の話で、愛美はふと〈わかば園〉にいた小谷涼介のことを思い出した。

「そりゃまぁいるだろうね。愛美みたいに親のいない子だけじゃなくて、色んな事情のある子が来るところなワケでしょ?」

「うん。その子、わたしの二つ年下の男の子なんだけど。その子ね、実のご両親から育児放棄されて保護されてきた子だったの。自分が産んだ子供を育てるのを放棄する親ってどうなの? 育てられないなら産まなきゃよかったじゃない、って園長先生もカンカンに怒ってた」

「へぇ……。世の中にはそんな親もいるんだね。それこそ親ガチャ大ハズレじゃん。っていうか、それと珠莉のこととどんな関係が?」

「あー、うん。夏に純也さんから聞いたから。彼のお母さまは進んで子育てをするような人じゃなかったって。だから今でも元家政婦さんのこと、実の母親以上にお母さんだと思ってるみたい」

「あら、お祖母(ばあ)さまもそうでしたのね。私の母もそうですわ。娘である私のことより社交界でのお付き合いだとか、世間体ばかり気にしてらっしゃって。叔父さまにとっての祖母がそうだったように、私にとっての母も遺伝子上の母≠ナしかないの」  

「…………」

 ということは、彼女も実質乳母(うば)とかベビーシッターさんに育てられたということだろうか。

「へぇ…………、今時いるんだそんな親。っていうかセレブの世界ではそれが当たり前なの?」

「いえ、違う……と思いますわ。わが一族が普通じゃないだけでしょう」

 施設育ちの愛美はもちろん、ごく一般的な家庭に育ったさやかにもそのセレブ独特な考え方は理解できなかった。

「……で、話戻すけどさ。その男の子が何だって?」

「あ、そうそう。その子のご両親ね、園長先生にお説教されて改心したはいいんだけど、今度はその子に逢いたいってちょくちょく園を訪ねてくるようになったの。自分たちで育てるのを放棄したくせに勝手でしょ? でも、ご両親のこと恨んでるその子は一度も会いたがらなかったんだけど」

「だろうね」

「その子今中三で、高校に進学させるためにご両親がまた無理矢理引き取りに行くんじゃないかってわたし心配で。夏休みにね、その子のことでおじさまにお願いしたの」

「お願いしたって何を?」

「その子が困ってたら、味方になってあげてほしいって。あと、できればその子の里親になってくれそうなご夫婦を探してみてくれませんか、って」

 もう十二月。そろそろ進路が決まる頃なので、あしながおじさん≠ゥら連絡が来てもいいと思うのだけれど……。
 さやかも同じ気持ちだったらしく、ハッとしてこんなことを言った。


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