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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
華麗なる一族? @
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彼の心境には明らかな変化がある。

(でも、だからって親戚みんなとの関係までよくなったかっていうと……)

 そこまでは、愛美にも分からない。純也さんが話そうとしないので、知る(すべ)がないのだ。

「彼、今年はどうするのかなぁ? わたしを招待することは、まだ純也さんに伝えてないよね?」

「そうねぇ、まだ。こういうことは、愛美さんからお伝えした方が純也叔父さまもお喜びになるんじゃないかしら。あなたがいらっしゃるって聞いたら、叔父さまも帰っていらっしゃるかもしれないわ」

「うん、そうだね。わたしから電話してみる」

 愛美はいそいそと、スマホの履歴から純也さんの番号をリダイヤルした。 

 別に自分が辺唐院家の関係を修復する潤滑油になりたいとは思っていない。愛美はただ、冬休みにも大好きな純也さんに会いたいだけで……。動機としてはちょっと不純かもしれないけれど。

 そして、もしも彼が本当にあしながおじさん≠セったとしたら、絶対に「冬休みは辺唐院家へ行くように」という指示が送られてくるはずだから。

『もしもし、愛美ちゃん。どうしたの?』

 時刻は夕方五時半過ぎ。普通のお勤め人なら、帰宅途中というところだろうか。もしくは、まだ残業中か。
 でも、彼は若いけれど経営者である。そもそも定時≠ニいうものがあるのかどうか分からないけれど、愛美には彼が今オフィスにいるのか、自宅にいるのか、はたまた別の場所にいるのかまったくもって推測できない。

「あ……、愛美です。久しぶり。――あの、純也さんはこの冬、どうするのかなぁと思って」

『う〜ん、どうしようかな。実はまだ決めてないんだ。まあ、仕事はそんなに忙しくないし。そもそも年末は接待ばっかりでね、僕もウンザリしてる』

「純也さんって、お酒飲めないんだっけ?」

『そうそう! でも、接待だから飲まないわけにもいかなくて。少しだけね』

「大人って大変なんだね……。あのね、わたし、珠莉ちゃんに招待されたの。『冬休みは我が家にいらっしゃいよ』って」

 ……さて、エサは撒いた(というのも失礼な言い方だと愛美は思ったけれど)。純也さんはどうするだろうか?

『えっ、珠莉が……』

「うん、そうなの。わたし、お金持ちのお屋敷に招待されるの初めてで、ものすごく緊張しちゃいそう。でも、純也さんも一緒にいてくれたら大丈夫だと思うの。だから純也さんも、たまにはご実家に帰ってこられない?」

 愛美自身、言っているうちに鳥肌が立っていた。こんな()び媚びのセリフを自分が言っているのが自分でも気持ち悪くて。

(こんなの、わたしのキャラじゃないよ……)

「ご家族とうまくいってないことは知ってます。でも、わたしのためだと思って、お願い聞い
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