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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
疑いから確信へ A
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えた。

「さやかちゃん、珠莉ちゃん! わたし――」

「聞こえてたよ、愛美。おめでとう!」

 勉強スペースに戻ってきた彼女が口を開こうとすると、さやかがみなまで言わせずに喜びの言葉をかぶせて来た。

「愛美さん、デビュー決定おめでとう。やりましたわね」

「うんっ! 二人とも、ありがと!」

 親友二人からの温かいお祝いの言葉に、愛美は胸がいっぱいになりながらお礼を言った。  

「――そうだ愛美。このこと、おじさまに報告しなくていいの? おじさまも待ってるんじゃない?」

「……うん。そうだね」

 さやかに訊ねられ、愛美は悩んだ。――この報告は、あしながおじさん≠ニ純也さんの両方にすべきなのか、それともあしながおじさん≠セけにしてもいいのか?

(だって、結局は同じ人に報告してることになるんだもん)

 両方に報告することは、愛美にしてみれば二度手間でしかない。けれど、どちらか一方だけに知らせれば、彼は「もしかして、自分の正体がバレているんじゃないか」と感づくかもしれない。

(どうしようかな……)

「愛美さん。純也叔父さまには私からお知らせしておきますわ。だから、あなたはおじさまにだけお知らせしたらどうかしら?」

 悩む愛美に、珠莉が助け船を出してくれた。

「姪の私が知らせても、純也叔父さまは不思議に思われないわ。お二人とも回りくどいのが嫌いなのは分かっておりますけど、そうした方がいいと思うの」

 そうすれば、純也さんからはきっと後からお祝いのメッセージが来るだろう。……珠莉はそう言うのだ。

「そうだね。珠莉ちゃん、ありがと。じゃあそうしようかな」

「あたしもそれでいいと思うよ。まどろっこしいけど、仕方ないよね」

「うん」

 やっぱり、さやかも珠莉が言った通り、あしながおじさん≠フ正体を知っているらしい。

「じゃあわたし、勉強が終わったらおじさまに手紙書くね」

「うん! そうと決まれば、早く勉強終わらせよ!」

 この嬉しいニュースのおかげで、この後三人の勉強が(はかど)ったのは言うまでもない。


****

『拝啓、あしながおじさん。

 おじさま、ビッグニュースです! わたし、作家デビューが決まりました!
 今日の午後、さやかちゃんと珠莉ちゃんと三人でテスト勉強をしてた時に、出版社の人から連絡が来たんです。わたしが応募した作品が、文芸誌の短編小説コンテストで佳作に選ばれた、って。その作品は、その文芸誌の来月号に掲載されるそうです!
 この小説は、夏休みにわたしが書いた四作の中から純也さんが選んでくれた一作です。彼には本当に、感謝しかありません!
 わたしとおじさま、そして純也さんの夢が早くも叶いました。
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