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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
疑いから確信へ @
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「――ホント、すごい厚み……」

 折り畳んだ便箋を封筒に収めた後、愛美はフフッと笑った。純也さんが来るまでの間にも、あしながおじさん≠ノ伝えたい色んな体験をしていて、愛美はそれを毎日日記のように便箋に綴っていたのだ。

 スタンドライトの明かりだけがついている机の上にはもう一通、A4サイズの茶封筒が置いてある。この夏に愛美が執筆し、四作ある中から純也さんに選んでもらった文芸コンテストへの応募作品だ。

(明日これを郵送したら、あとは運を天に任せるだけ……。お願い、入選させて! 佳作でもいいから!)

 願かけするように、愛美は封筒の表面をひと撫でした。

「――さてと。ボチボチ寝られるかな……」

 手紙を書いているうちに、少しずつ眠気が戻ってきた。気持ちが落ち着いてきたからかもしれない。

 愛美はスタンドの明かりを消すと、再びベッドに潜り込んだのだった。


   * * * *


 ――翌日の朝。愛美は八時になってやっとダイニングまで下りてきた。

「おはようございます。――すみません、多恵さん! 朝ゴハンの支度お手伝いするつもりだったのに、寝坊しちゃって」

 農家の朝は早い。愛美も普段は朝早くに起きて、多恵さんや佳織さんと一緒に朝食の準備を手伝っているのだけれど。昨晩はなかなか寝付けなかったので、朝目が覚めるのも遅くなってしまったのだった。

「あらあら。おはよう、お寝坊さん。いいのよ愛美ちゃん、たまには朝のんびり起きてくるのも。誰だって、早く起きられない日くらいあるものね」

「ええ、まぁ……」

 愛美はテーブルに純也さんもついていることに気づき、頬を染めた。
 彼とキスをしてまだ数時間しか経っていないので、ちょっとばかり気まずい。

「愛美ちゃん、おはよう」

「……おはようございます」

 けれど、純也さんはいつもとまったく変わらない調子で挨拶してくれたので、愛美はまだ少し照れながら挨拶を返した。

「ゆうべはあんまり寝られなかった?」

「えっ? ……まぁ。だから、しばらく起きてました」

 彼と面と向かって言葉を交わしているだけで、愛美には昨晩の出来事がありありと思い出せる。今もまだ、あの時の延長線上にいるような気持ちになるのだ。

「そっか……。なんか僕、君に悪いことしちゃったな」

「そっ……、そんなことないです! わたしは別に、あれで困ってるワケじゃ……」

 申し訳なさそうに頬をポリポリ掻く純也さんに、愛美はもごもごと弁解した。

「あら? 坊っちゃん、昨夜は愛美ちゃんと何かあったんですか?」

 そんな二人の様子を眺めていた多恵さんが、会話に割って入った。

「まさか坊っちゃ
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