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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
疑いから確信へ @
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は今一緒じゃないの? こんな話してて大丈夫?』

「大丈夫。純也さんには今、隣りのお部屋でわたしの小説読んでもらってるから。わたし今、自分の部屋で電話してるの」

『そっかぁ。じゃあ今ドキドキだね』

「うん……。彼からどれだけ辛口評価が下されるのか、もう心配で」

 最悪の場合、四作全滅の可能性もあるのだ。そしたらきっと立ち直れないだろう。

『まあ、そんなに心配しないでさ。胃に穴空くよ。……じゃあ、ぼちぼち切るわ。消灯迫ってるから』

 愛美はスマホ画面の隅っこに表示されている小さな時刻表示を見た。間もなく九時五十分になるところである。

「あー、もうそんな時間か。ありがとね、話聞いてくれて。じゃあ、また電話するよ。おやすみ」

『うん、おやすみ』

 ――電話を切ると、愛美は純也さんの部屋と接する壁を見つめた。

「純也さん、そろそろ読み終わった頃かな」

 もう一度彼の部屋を訪ねてみると、ちょうど彼は最後の原稿を机の上に置いたところだった。

「愛美ちゃん、ちょうどよかった。今、全部読み終わったところだよ」

「そうですか。……で、どうでした?」 

「うん……、そうだな……」

 そう言うなり、腕組みをして長〜い溜めを作った純也さんに、愛美はものすごくイヤな予感がした。

「もしかして、全滅……?」

「……いや。確かに、この中の三作はちょっと、箸にも棒にもかからないと思った」

「はあ」

 彼の評価は思っていた以上に辛口で、愛美は絶望的な気持ちになった。
 四作中三作がボツをくらったら、ほとんど全滅のようなものである。……けれど。

「でも、この一作はなかなかいいんじゃないかな。応募したら、けっこういいところまで残ると思うよ」

 純也さんは表情を和らげながら、愛美に原稿を返した。

「えっ、ホントですか!? コレ、一番最後に書き上げたんです」

 純也さんが唯一褒めてくれた作品は、昨日書き上げたばかりのノンフィクション作品。愛美が実際に、今の学校生活で経験したことをもとにして書いたものだった。

「ああ、やっぱり。短編っていうのはね、数を多く書くことで内容もよくなっていくんだって。愛美ちゃんのもそうなんだろうね。全部の原稿を読ませてもらってそう気づいたよ」

「純也さん、ありがとう! わたしもこれで自信がつきました。この一作で勝負してみます!」

 これだけ手厳しい彼に褒められたんだから、きっといい結果が出ると思う。

「うん、頑張って! ――そういえば、愛美ちゃんってパソコン使えるんだね。原稿、てっきり手書きだと思ってた」

「使えますよ、施設にいた頃から。そんでもって、この原稿はおじさまから入学祝いに贈られた自分のパソコンで書
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