暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
疑いから確信へ @
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クリップで綴じてあって、一枚ずつ通し番号も振ってある。
「ああ、そうだったね。……ところでさ、女の子がこんな夜に、男の部屋に来るってことがどういう意味か分かってる? しかも、そんな
無
(
む
)
防
(
ぼう
)
備
(
び
)
な格好で」
「…………えっ?」
純也さんは明らかに面白がっている。愛美が顔を真っ赤にして固まったので、途端に大笑いした。
「……なんてね、冗談だよ。からかってゴメン! そうやってあたふたする愛美ちゃんが可愛いから、つい」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ! もうっ!」
愛美はからかわれたと知って、あたふたした自分が恥ずかしくなった。この「もう!」は純也さんにではなく、自分自身に対してである。
「とにかく座りなよ。っていっても、ベッドしか座る場所ないけど」
「え…………」
まだ警戒心が解けない愛美は、座るのをためらったけれど。
「大丈夫だって。僕は紳士だから。何もしないから安心して」
「……はい」
愛美は「ホントかなぁ?」と
訝
(
いぶか
)
りつつ、シンプルなベッドに腰を下ろした。実はけっこう根に持つタイプなのだ。
「――じゃあ、原稿読ませて」
「はい」
純也さんが手の平を見せたので、愛美は原稿を全部彼に手渡した。
「ありがとう。どれどれ……」
原稿に目を通し始めた彼を、愛美は
固唾
(
かたず
)
をのんで見守る。
もし全滅だったら……と思うと、何だかソワソワして落ち着かない。
「……あの。下のキッチンでカフェオレでも淹れてきましょうか?」
読んでもらっている相手に気を利かせて、というよりは、この緊張感から少しの間でも離れていたくて、愛美は提案した。
「ありがとう。そうだな……、全部読み終わるまでには時間かかりそうだし。愛美ちゃんもここにいたって落ち着かないよね」
そんな愛美の心境を察して、純也さんは「じゃあ頼むよ」とその提案に乗ってくれた。
――十分後。愛美は二人分のマグカップとクッキーのお皿が載ったお盆を手にして、純也さんの部屋に戻ってきた。
「カフェオレ淹れてきました。どうぞ」
愛美の声に気づき、純也さんは原稿から顔を上げた。
「ありがとう、愛美ちゃん。ちょっと待って」
彼はアウトドア用品の詰め込まれたスーツケースから、折り畳み式の小さなテーブルを出して室内に設置してくれた。
「お盆はここに置きなよ」
愛美がそこにお盆を置くのを見ながら、彼は何やら考え込んでいる。
「うーん……、この部屋にはテーブルも必要だな」
「そうですよね……」
愛美も頷く。たまたま純也さんがアウトドア用のテーブルを持ち込んでいたからよかったものの、やっぱりテーブルはないと不便だ。
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