暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… @
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他のコたちの群を抜いている。
 中でも短距離走には、かなりの自信があるようで。

「でしょ? この分だと、マジで今年は夏休み返上かも。あ〜、キャンプ行きたかったなぁ」

 インターハイに出られそうなことは嬉しいけれど、そのために夏休みの楽しみを諦めなければならない。――さやかは複雑そうだ。

「仕方ないよ。部活の方が大事だもんね」

「まあね……。ところで愛美、今帰り? ちょっと遅くない?」

 部活に出なかったわりには、帰りが遅いんじゃないかと、さやかは首を傾げた。

「うん。あの後ね、上村先生に呼ばれて職員室に行ってたから。大事な話があるって」

「大事な話=H ってナニ?」

 さやかは今すぐにでも、その話の内容を知りたがったけれど。

「うん……。でもさやかちゃん、今部活中でしょ? ジャマしちゃ悪いから、寮に帰ってきてから話すよ。珠莉ちゃんも一緒に聞いてもらいたいし。――そろそろ練習に戻って」

「分かった。じゃあ、また後で!」

 さやかは愛美にチャッと手を上げ、来た時と同じく駆け足で他の部員たちのところへ戻っていった。


   * * * *


「――えっ、『奨学金申し込め』って?」

 その日の夕食後、愛美は部屋の共有スペースのテーブルで、担任の上村先生から聞かされた話をさやかと珠莉に話して聞かせた。

「うん。っていうか、その場で申請書も書いた。わたしが書かなきゃいけないところだけ、だけど」

「書いた、って……。愛美さんはそれでいいんですの?」

 珠莉は、愛美が自分の意思ではなく先生から無理強いされて書いたのでは、と心配しているようだけれど。

「うん、いいの。わたしもね、おじさまの負担がこれで軽くなるならいいかな、って思ってたし。いつかお金返すことになっても、その金額が少なくなった方が気がラクだから」

「お金……、返すつもりなんだ?」

「うん。おじさまは望んでないと思うけど、わたしはできたらそうしたい」

 愛美の意思は固い。元々自立心が強い彼女にとって、経済面であしながおじさん≠ノ依存している今の状況では「自立している」ということにはならないのだ。
 もし彼がその返済分を受け取らなくても、愛美は返そうとすることだけで気持ちの上では自立できると思う。

「それにね、奨学金は大学に上がってからも受け続けてられるんだって。大学の費用まで、おじさまに出してもらうつもりはないから」

「それじゃあ、あなたも私たちと一緒に大学に進むつもりなのね?」

「うん。そのことも含めて、おじさまには手紙出してきたけど。さすがにこんな大事なこと、わたし一人じゃ決めらんないから」

 愛美はまだ未成年だから、自分の意思だけでは決められないこと
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