暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… @
[3/15]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
「書けた? ……はい、大丈夫。じゃあ、すぐに相川さんの保護者の方宛てに郵送しておくわね」
「先生、このこと……わたしからも伝えておいた方がいいですか? 田中さんに」
こんなに大事なことを、愛美ひとりで決められるはずがない。学校の事務局から書類が送られるにしても、念のため愛美からもお願いしておいた方がいいと思ったのだ。
だいいち、あしながおじさん≠ェ「もう自分の援助は必要ないのか」とヘソを曲げないとも限らないし――。
「そうね。それは相川さんに任せるわ。私からの話は以上です」
「はい。先生、失礼します」
――職員室を後にした愛美は、寮までの帰り道を歩きながら考え込んでいた。
(奨学金……ねぇ。そりゃあ、受けられたらわたしも助かるけど……。おじさまは気を悪くしないのかな……?)
彼はよかれと思って、厚意で愛美の援助に名乗りを上げたのだ。他に手助けしてくれる人がいないのなら、自分が――と。
それに水を差されるようなことをされて、「もう援助は打ち切る」と言われてしまったら……?
(もちろん、奨学金でもわたしのお小遣いの分までは出ないから、それはこの先もありがたく受け取るつもりでいるけど)
今までのようにはいかなくても、お小遣いの分だけでも愛美が甘えてくれたなら、あしながおじさん≠燻ゥ分のメンツが保てるんだろうか?
「こんなこと、純也さんに相談してもなぁ……」
彼とは一ヶ月前に連絡先を交換してから、頻繁に電話やメッセージのやり取りを続けている。「困ったときには何でも相談して」とも言ってくれた。
でも、こればっかりは他人の彼が口出ししていい問題ではない気がする。
「っていっても、もう手続きしちゃってるし。今更『やっぱりやめます』ってワケにもいかないし」
本校舎から〈双葉寮〉まで帰るには、途中でグラウンドの横を通る。グラウンドでは、さやかが所属する陸上部が練習の真っ最中だった。
「――わあ、さやかちゃん速〜い!」
百メートル走のタイムを測っていた彼女は、十二秒台を叩き出していた。
「暑い中、頑張ってるなぁ」
本人に聞いた話では、五月の大会でも準優勝したとか。この分だと夏のインターハイへの出場も確実で、今年は夏休み返上かもしれない、とか何とか。
「さやかちゃ〜ん! お疲れさま〜!」
愛美は親友の練習のジャマにならないように、その場から大声で声援を送った。すると、タオルで汗を拭きながらさやかが駆け寄ってくる。
「愛美じゃん! さっきの走り、見てくれた?」
「うん! スゴい速かったねー」
愛美は体育は得意でも苦手でもないけれど(
強
(
し
)
いて挙げるなら、球技は得意な方ではある)。さやかは体育の授業で、どんな種目も
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ