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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
純也の来訪、再び。
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道部かしら。お茶とお花は大和(やまと)撫子(なでしこ)のたしなみですもの」

 対照的な性格の親友たちは、部活を選ぶ基準も対照的だ。運動神経のいいさやかと、「さすがはお嬢さま」という珠莉。それでも仲良くできているのだから、世の中は不思議である。

 ところが、そんな珠莉にさやかが茶々(ちゃちゃ)を入れる。

「そんな優雅なこと言ってるけど、ホントはお茶菓子が食べたいだけなんじゃないのー?」

「……んなっ、そんなことありませんわ! さやかさんじゃあるまいしっ」

「どうだかねえ」

 珠莉はムキになって否定したけれど、本当のところはどうなんだろう?

(まあ、楽しめたら理由なんて何でもいいよね)

 本当に茶の湯を学びたかろうが、お茶菓子目当てだろうが、どちらでもいいと愛美は思う。

「――あら?」

「……ん?」

 〈双葉寮〉の手前まで来た時、珠莉が寮の前に(たたず)む一人の男性の姿に気がついて声を上げた。
 百九十センチはありそうな身長といい、ナチュラルブラウンの髪の色といい、あれは――。

「やあ。久しぶり」

「純也さん……」

「おっ、叔父さま!」

 やっぱりその男性は、ベージュ色のスーツをビシッと着こなしている純也さんだった。
 今日は何やら箱を持っている。――あの中には何が入っているんだろう?

「今日はどうなさいましたの? ご連絡もなしでいらっしゃるなんて」

「いや、仕事の用事で横浜まで来たから、ついでに寄ったんだ。連絡しなかったのは、ビックリさせようと思ったからだよ」

 叔父と姪の会話に入っていけない愛美の背中を、さやかがポンと叩いた。

「……えっ?」

「ほら、行っといで」

「わわっ!」

 そのまま文字通り背中を押された愛美は、純也さんの目の前で止まった。

(〜〜〜もう! さやかちゃんのバカ!)

 純也さんと話したいのに、緊張でなかなか言葉が出てこない。あたふたしている愛美の顔は今、茹でダコみたいに赤くなっているに違いない。

「あ……、あの。お久しぶりです」

「久しぶりだね。去年の夏に、電話で話したきりだったっけ?」

「はい、そうですね」

 千藤農園にかかってきた電話のことだ。もう忘れていると思っていたけれど、彼はちゃんと覚えていてくれた。

「体調はどう? 冬にインフルエンザで入院してたって、珠莉から聞いたんだけど」

「――あら? 私、そのこと叔父さまにお話したかしら?」

「えっ、どういうこと?」

 困惑気味に交わされた親友二人の会話は、幸いにも愛美の耳には入らなかった。

「もうすっかり元気です。一ヶ月以上も前のことですよ? でも心配して下さってたんですね。あ
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