暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
バイバイ、ネガティブ。
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のつかえがおりたおかげでみるみるうちに元気になり、その二日後には退院することができた。
病
(
やまい
)
は気から≠ニはよくいったものである。
「――さやかちゃん、珠莉ちゃん! ただいま!」
二週間ぶりに寮に帰ってきた愛美は、自分の部屋に入る前に、隣りの親友二人の部屋にやってきた。
元気いっぱいの声で、二人に笑いかける。
「おかえり……。愛美、もう大丈夫なの!?」
「うん、もう何ともないよ。さやかちゃん、毎日来てくれてありがとね。心配かけちゃってゴメン」
ビックリまなこで訊ねたさやかに、愛美は安心させるように答えた。
あのフラワーボックスが届いた日に流した涙が、愛美の中の
蟠
(
わだかま
)
りやネガティブな心を全部洗い流してくれたのかもしれない。
「愛美さん、一度もお見舞いに伺えなくてゴメンなさいね」
「いいんだよ、珠莉ちゃん。わたしも分かるから。注射が苦手だから、予防接種受けてなかったんでしょ?」
「……ええ、まあ」
(やっぱりそうなんだ)
愛美はこっそり思った。
つい一年ほど前に初めて会った時には、冷たくてとっつきにくい女の子だと思っていたけれど。こうして自分との共通点を見つけると、ものすごく親近感が湧いてくる。
「――もうすっかり春だねぇ……。そしてもうすぐ、あたしたちも二年生か」
「そうだね。もう一年経つんだ」
暖かい日が少しずつ増えてきて、校内の桜の木も
蕾
(
つぼみ
)
を膨らませ始めている。
一年前、希望と少しの不安を抱いてこの学校の門をくぐった時は、愛美は独りぼっちだった。頼れる相手は、手紙でしか連絡を取れないあしながおじさん≠スった一人。もちろん、地元の友達なんて一人もいなかった。
でも、今はさやかと珠莉という心強い二人の親友に恵まれた。他にもたくさんの友達ができた。
もう一人でもがく必要はない。何か困ったことがあれば、まずはこの二人に話せばいい。それからあしながおじさん≠頼ればいいのだ。
「――あ、そうだ。四月からあたしたち、三人部屋に入れることになったからね」
「えっ、ホント!? やったー♪」
愛美はそれを聞いて大はしゃぎ。二学期が始まる前に、愛美とさやかとで話していたことが実現したらしい。
さやかの話によれば、愛美の入院中にさやかがその話を珠莉にしたところ、「それじゃ私も一緒がいい」と珠莉も言いだしたのだという。
そして、ちょうど具合のいいことに、同じ学年で三人部屋を希望するグループが他にいなかったため、空きが出たんだそう。
「来月からは、三人一緒だね。わたし、嬉しいよ。一人部屋はやっぱり淋しいもん」
「うん。あたしも珠莉も、愛美とおんなじ部屋の方が安心だよ。もうあんなこと
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