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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
バイバイ、ネガティブ。
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ありません。
 わたしの手紙はきっと、あなたには読まれていない。秘書さん止まりで、あなたは読みもしないでゴミ箱に放り込んでるに決まってます。
 もしも勉強のことにしか興味がないのなら、今後はそうします。
 学年末テストは無事に終わりました。わたしは学年で五位以内に入って、二年生に進級できることになりました。    かしこ

                二月二十日    相川愛美    』 

****


 ――こんなバチ当たりな手紙を出した(むく)いだろうか。愛美はこの手紙が投函された翌日、四十度の高熱を出して倒れ、付属病院に入院することになってしまった。


   * * * *


「――愛美、具合はどう?」

 入院してから十一日後、愛美の病室にさやかがお見舞いにやってきた。
 看護師さんにベッドを起こしてもらっていた愛美は、窓の外を眺めていた。今日は朝から雨だ。

「うん、まあボチボチかな。食欲も出てきたけど」

「そっか、よかった。――コレ、今日の授業でとったノートのコピーね」

「さやかちゃん、ありがと」

 愛美はお礼を言いながら、さやかがテーブルの上に置いたルーズリーフの束を取り上げた。

 ――愛美は四日前には体温も三十七度台まで下がり、点滴も外してもらって、お(かゆ)だけれど普通食を食べられるようになった。

 でも……、一つ気がかりなことがあって、それ以上病状がよくなってはいなかった。 

「さやかちゃん、……郵便受けには今日も何も?」

「うん、来てないよ。あれからもう四日経つよね。そろそろおじさまも、何かアクション起こしてもいい頃だと思うんだけど」

「そっか……」 

表情を曇らせて答えるさやかに、愛美はガックリと肩を落とす。

 ――愛美は医師の診察の結果、インフルエンザと診断された。入院してから数日は高熱が続き、おでこに冷却シートを貼られて点滴を打たれていた。
 四日前にやっと熱も下がってきて、起き上がっても大丈夫になったので、あしながおじさん≠ノ自分が今インフルエンザで入院中だということを手紙で書き送ったのである。前回、あんなひどい手紙を出してしまったことへの謝罪も兼ねて。
「あんなことを書いたのは、病気で神経が参っていたからだ」と。
 その手紙をさやかに出してきてもらい、もう四日。さやかの言う通り、そろそろ返事か愛美の容態(ようだい)を訊ねる手紙でも来ないとおかしいのに……。

「……わたし、おじさまにとうとう愛想尽かされちゃったかな」

「ん?」

 愛美がポツリと呟く。彼女はある可能性を否定できなかった。
 あしながおじさん≠ヘあの最悪の手紙に腹を立て、自分のことを見限ったんじゃないか、と。
 こ
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