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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
ナツ恋。 A
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、情に厚い人のはず。昔お世話になった恩人に連絡をしないわけがない。
「ええ。毎年、夏になるとお電話を下さるわよ。でも今年はまだだわね」
「そうなんですか。――多恵さん、色々教えて下さってありがとうございました」
これだけ話を聞かせてもらえれば、愛美は満足だ。彼の幼い頃を知ったおかげで、彼のことをもっと好きになれる気がしたから。
「いえいえ、どういたしまして。――ねえ愛美ちゃん、もしかして坊っちゃんに恋してるんじゃないの?」
「……はい。でも、どうして分かったんですか?」
「フフッ。だって、私もオンナだもの。この
年齢
(
トシ
)
になってもね」
多恵さんにも、愛美の彼への恋心はバレバレだったらしい。自分では、うまく隠していたつもりだったのだけれど。
(は〜〜〜〜、もうヤダヤダ! なんでこんなにダダ漏れなの!?)
初恋ってこんなものだろうか? 「好き」という気持ちがうまく隠せなくて、思いっきり顔に出ているとか。
(もうちょっとオトナになって、感情をうまく隠すスキルを身につけないと……)
愛美はそう固く決心した。――それはさておき。
「多恵さん、わたしはもうちょっとここに残っててもいいですか? 多恵さんは先に下りて休んで下さい」
愛美は彼女にそう言った。
幼い頃の純也さんと、もう少し二人きりで対話≠オたくなったのだ。彼の人となりをもっと知りたい。そして持ち前の想像力で、自分なりにその頃の彼のイメージを膨らませたい。
「ええ、どうぞ。じゃあ、私は先に休ませてもらうわね。愛美ちゃん、おやすみなさい」
――多恵さんが下の階に下りていくと、愛美は広い屋根裏部屋の隅から隅まで歩き回ってみた。
「……ん? 何だろ、コレ? 本……かなあ」
手に取ったのは、ホコリを被った小さなテーブルの上に
無
(
む
)
造
(
ぞう
)
作
(
さ
)
に置かれていた一冊のハードカバーの本。タイトルは聞いたことがないけれど、どうも海外の冒険小説の日本語翻訳版らしい。
表紙を開き、見開きの部分に見つけたおかしな落書きに、愛美は思わず笑ってしまった。
そこには、子供が書きなぐったような字でこう書かれていた。
『この本が迷子になってたら、ちゃんと手をひいてぼくのところに連れて帰ってきてほしいです。辺唐院じゅんや』
「やだ、なにコレ? 可愛い」
ここで静養していた頃に、純也が気に入って読んでいた本らしい。もうページはどこもクタクタだし、あちこちに小さな手形がついている。
「純也さんって、子供の頃から読書好きだったんだ……」
初めて学校で愛美に会った時に、彼は「読書好きだ」と言っていたけれど。その原点がここにあったとは。
この屋根裏に残されている彼の
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