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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
ナツ恋。 A
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人のこと知りたいんです。多恵さんなら色々ご存じなんじゃないかと思って」

 好きな人のことなら、何でも知りたい。そして、ここには昔のあの人のことをよく知っていそうな元家政婦さんがいる。

「いいわよ。じゃあ、ここが片付いたら私について来てちょうだいな」

「いいんですか? ありがとうございます!」

 多恵さんは愛美の頼みを快諾してくれた。彼女に聞こえないように、佳織が声をひそめて愛美にささやく。

「よかったね、愛美ちゃん。純也坊っちゃんのお話、聞かせてもらえて」

「はい。――あ、このお皿、どこにしまったらいいですか?」

 愛美は張り切って、水切りが終わったカレー皿を取り上げた。


   * * * *


 ――愛美が多恵さんに連れられて来たのは、この家の屋根裏部屋だった。

「純也坊っちゃんはね、子供のころ喘息(ぜんそく)(わずら)ってらして。十一歳くらいの頃の夏に、ここでご静養なさってたの。私も一緒にここに滞在して、坊っちゃんのお世話をしてたのよ」

「えっ? 喘息……」

 つい最近会った純也さんからは、そんな様子は感じ取れなかったけれど。

「今はもう何ともないそうよ。それに、発作さえ起きなければ、普段はお元気そうだったし。冒険好きのお子さんでね、ほとんど毎日外を走り回ってらしたわ。それで、泥だらけになって帰ってらしたの」

「へえ……、そうなんですか。子供らしいお子さんだったんですね。……っていうのもヘンな言い方ですけど」

 愛美の言い方は、ある意味的を()ていたのかもしれない。
 お金持ちのお坊っちゃん、それも()()辺唐院家の子息なら、もっとツンケンしていて大人びている子供でもおかしくなかったはずなのに。珠莉を知っているから、余計にそう思うのだろうか。

「そうね。正義感もお強かったし、それでいていたずらっ子なところもおありだったわ。でも、そこが憎めないのよ。私も、母親になったみたいな気持ちで坊っちゃんのお世話をさせて頂いてたわ」

「フフフッ。多恵さん、純也さんが可愛くて仕方なかったんですね」

 愛美は微笑ましくその話を聞いていた。これが実の母親だったら、なんという親バカだろうか。

(なんか、今でもここに純也さんがいそうな感じがする。それも、無邪気な子供時代の)

 ――泥んこになるまで遊びまわって、帰ってきたら多恵さんに「お腹すいたー! おやつま〜だ〜?」とねだっている純也少年の姿が、愛美の(のう)()に浮かんだ。

「中学を卒業されてからは、ここにはあまり来られなくなったんだけど。最近はきっと、お仕事がお忙しいのかしらねえ」

「そうですか……。でも、連絡は来るんでしょう?」

 彼はきっと
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