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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
ナツ恋。 A
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りていくと、キッチンでは多恵さんの他に若い女性も料理の盛り付けをしているところ。
肩にかかるくらいのセミロングの髪をした、身長百六十センチくらいの女性。――彼女が佳織さんだろうか?
「――あの、わたしも何かお手伝いしましょうか?」
愛美が声をかけると、多恵さんがニコニコと指示を出してくれた。
「あらそう? じゃあ、盛り付けたサラダとスプーンとフォークをテーブルまで運んでもらえる? ――佳織ちゃん、食器のある場所、愛美ちゃんに教えてあげて」
「はい、おかみさん」
佳織ちゃん≠ニ呼ばれたその女性が、
快
(
こころよ
)
く返事をした。
「愛美ちゃん、食器棚はコレ。スプーンは左の引き出し、フォークは真ん中ね」
「はい。――えっと、平川佳織さん……ですよね? 天野さんとお付き合いしてるっていう」
人数分のカトラリーを取り出しながら、愛美がそれとなく訊いてみると。
「……んもう。あの人ってば、もう愛美ちゃんに喋っちゃったんだ?」
佳織さんは、顔を真っ赤に染めてそう言った。どうやら、天野さんの話は本当らしい。
「あたしと彼の関係は、ご主人とおかみさんには内緒なの。……まあ、気づいてらっしゃるかもしれないけど。彼はあたしより三つ年上なんだけど、農業に対する姿勢とか、そういうところがステキだなって思ったんだ」
「それで恋しちゃったんですね。天野さんも、佳織さんも」
佳織さんは照れながらも、「うん」と頷いた。
「恋する気持ちだけは、誰にも止められないからね。――愛美ちゃんは、好きな人いるの?」
「……はい。実は、純也さんなんです。ここの元の持ち主だった」
「えっ!? そうなの? うーん、そっか。頑張ってね」
「はいっ!」
まさかこの場で、ガールズトークが盛り上がるとは。愛美は佳織さんのことを、この短時間で身近に感じられるようになった。
「――さて、早く夕飯の支度終えないと。テーブルでウチの腹ペコどもが騒ぎ出しちゃうね」
「そうですね。じゃあサラダとコレ、お盆に載せて運びます」
「うん、お願い」
* * * *
――夕食のメニューは夏野菜たっぷりのカレーライスとサラダ、デザートにはこの農園の果樹園で採れたフルーツ入りのヨーグルト。
そして、農業が初体験の愛美のおかしな質問によって、とても賑やかで楽しい食卓となった。
「――多恵さん。昔の純也さんのお話、もっと聞かせてもらえませんか?」
多恵さんと佳織さんと一緒に、食後の洗いものの片付けを手伝いながら、愛美は多恵さんに頼んでみた。
「えっ、坊っちゃんの話?」
「はい。わたし、大人になってからの純也さんのことしか知らないから。もっとあの
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