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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
ナツ恋。 A
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、レターパッドとペンケースを取り出し、部屋の窓際にあるアンティークの机に向かった。

「あしながおじさんに、『無事に着きました』って報告しよう。あと、さっきのことも確かめないとね」

 レターパッドの表紙をめくり、そのページにペンを走らせる。


****

『拝啓、あしながおじさん。

 お元気ですか? わたしは今日も元気です。
 ついさっき、長野県の千藤農園に着きました。まだ荷(ほど)きもしてないんですけど、ここに無事に着いたことをおじさまに知らせたくて。
 ここは自然がいっぱいの場所で、昼間の今でも冷房なしですごく涼しいです。横浜の暑さがウソみたい。同じ日本の中とは思えません。
 ここで三年働いてる天野さんのお話によると、中心部は観光地で、スキー場に近いので冬はスキー客で賑わうそうです。でも、夏場はホタルの見物客くらいしか来ないみたいです。あと、星空もキレイなんだそうです。
 すごくロマンチックでしょう? わたしもいつか、純也さんと一緒にホタルが見られたらいいな……。
 あ、そうそう。純也さん≠ナ思い出しました。わたし、おじさまにお訊きしたいことがあって。
 おじさまはどうやって、この農園のことをお知りになったんですか? もしくは、秘書さんかもしれませんけど。
 どうして知りたいかというと、こういうことなんです。
 この農園の土地と建物は元々、辺唐院グループの持ち物で、純也さんの別荘だったそうです。
 で、千藤さんの奥さまの多恵さんは昔、辺唐院家で家政婦さんとして働いていらっしゃって、家政婦さんをお辞めになる時に純也さんからこの家と土地をプレゼントされて、ご夫婦でこの農園を始められたそうなんです。
 まさか、ここに来て純也さんの名前を聞くとは思わなかったんで、わたしは本当にビックリして。「もしかして、純也さんがあしながおじさん!?」とか思っちゃったりもしたんですけど……。まさか違いますよね? だってそれじゃ、『あしながおじさん』の物語そのままですもんね?
 とにかく、自然がいっぱいのここの環境は、山で育ったわたしには居心地がよさそうです。千藤さんご夫妻が、農業のこととか色々教えて下さるそうで、わたしはそれがすごく楽しみです。
 おじさま、こんなステキな夏をわたしにプレゼントして下さって本当にありがとうございます! 感謝の気持ちを込めて。     かしこ

                  七月二十一日    愛美』

****


 ――荷解きをしているうちに、夕方の六時を過ぎていた。

「愛美ちゃん、ゴハンにしましょう!」

 多恵さんが二階の部屋まで、愛美を呼びに来た。

「はーい! 今行きます!」

 すっかりお腹がペコペコの愛美が一階のダイニングキッチンに下
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