暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
恋の予感……
[9/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「あ…………、ありがとうございます」

(なんか……すごく嬉しい。お父さんとお母さんのこと、こんなに褒めてもらえて)

 それに……、愛美は純也に初めて会った時から、心が妙にザワザワするのを感じていた。
 まだ名前も分からないこの感情は、一体何なんだろう――? と。

「こんなに可愛い一人娘を遺して亡くなってしまって。ご両親はさぞ無念だったろうなあ……」

「…………可愛いだなんて、そんな。でも嬉しいです」

(――あ、まただ。何だか胸がキュンって。コレって何? わたし、どうなっちゃってるの?)

 彼に優しい言葉をかけられるたび、笑いかけられるたびに、愛美の心はザワつく。
 でも、それは決して不快ではなくて。むしろ心地よい感覚だった。


   * * * *


 ――信じられないことに、注文した品を二人がすっかり平らげてしまった頃。

「すみません、純也さん。わたし、ちょっとお手洗いに」

「ああ、うん。どうぞ」 

 ――ものの数分で愛美が戻ってくると、純也はスマホに誰かからの電話を受けていたようで、せわしなく通話を終えようとしているところだった。

「愛美ちゃん、すまない。僕はここの支払いを済ませたら、急いで帰らなきゃならなくなったんだ。だから今日、珠莉に会う暇がなくなった」

「えっ、そうなんですか? 大変ですね」

 純也は急いで席を立つと、レジで二人分の支払いをしてくれた。愛美も後ろからついていく。

「愛美ちゃん、今日はありがとう。楽しかったよ。珠莉によろしく伝えておいてくれるかな?」

「はい、もちろんです」

「よろしく頼むよ。じゃあ()()

「……はい。また」

 純也は車が迎えに来るらしく、駆け足で校門の方まで行ってしまった。

(…………また? また≠チてどういうこと?)

 彼をポカンと見送っていた愛美は、首を捻った。
 普通に考えたら、今日は会えなかった姪の珠莉に会うためにまた@るという意味だろう。でも、もしもそういう意味じゃないとしたら……。

(……なんて考えてる場合じゃなかった! 珠莉ちゃん待たせてるのに!)

 しかも、彼女に会わずに純也は帰ってしまった。どちらにしても、怒られることは予想がつく。けれど、彼女の元に戻らないわけにもいかない。

(はぁー……、珠莉ちゃんになんて言い訳しよう?)

 足取り重く、愛美が寮に帰っていくと、ちょうど補習授業を終えたさやかと珠莉も戻ってきた。

「愛美ー、おつかれ。補習終わったよー」

「愛美さん、今日はどうもありがとう。ムリなお願いをしてごめんなさいね。――ところで愛美さん、純也叔父さまはどちらに?」

(う……っ!)

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ