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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
恋の予感……
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「えっ、そうなんですか? 身内なのに?」
純也の思わぬ言葉に、愛美は目を丸くした。仮にも姪の友人に対して、何というカミングアウトだろう。
「うん。珠莉は小さい頃からワガママで、僕の顔を見るなり小遣いの催促をしてきて。その頃から『可愛くない子だな』と思ってたんだ」
(……やりそう。あの珠莉ちゃんなら)
入寮の日の一件を目の当たりにしていた愛美である。自分の部屋が一人部屋ではないことが気に入らないと、学校職員にかみついていた彼女なら、幼い頃からワガママだったと聞いても納得できる。
……けれど。
「そんなこと、わたしに言っちゃっていいんですか?」
愛美の口から、珠莉の耳に入るかもしれないのに。
「ハハハッ! マズいかな、やっぱり。珠莉にはこのこと内緒で頼むよ」
「はい、分かってます」
純也は話していると楽しい人物のようだ。愛美も自然と笑顔になった。
そして何故か、愛美は彼に対して妙な懐かしさのような感情をおぼえた。
「――でも、いいなあ。その年でもうやりたいことがあるなんて。正直羨ましいよ。僕は経営者の一族に生まれたせいで、夢なんて持たせてもらえなかったからね」
注文したものがテーブルに届き、紅茶をストレートで飲みながら、純也がしみじみと言った。
「えっ? じゃあ純也さんも社長さんなんですか? そんなにお若いのにスゴいですね」
〈辺唐院グループ〉の一員ということは、当然そうなるだろう。――もっとも、ここにいる彼は一見そう見えないのだけれど。
「いやあ、僕はそんなに大したもんじゃないよ。グループの一社の経営を任されてるだけでね。でも、僕の好きなようにはさせてもらってるよ。身内はうるさいけどね」
彼は
淡々
(
たんたん
)
と語っているけれど、それって他の親族たちから浮いているということじゃないだろうか?
疎
(
そ
)
外
(
がい
)
感を感じたりしないのだろうか? ――愛美はそう考えた。
(ある意味、この人もわたしと同じなのかも)
「そもそも、ウチの親族は僕のことをあんまりよく思ってないみたいなんだ。でも愛美ちゃんは、亡くなったご両親からちゃんと愛されてたみたいだね」
「……えっ? どうして分かるんですか?」
思いがけないことを言われ、愛美は目を瞠った。
彼に自分の亡き両親と面識があったとは、とても思えないのだけれど。
「珠莉から教えてもらったんだけど、愛美ちゃんの名前って愛されて美しい≠チて書くんだよね? そんなキレイな名前、君のことを大事に思ってなければ付けられないよ、きっと」
「……はあ」
「ほら、『名前は両親が我が子に与える最初の愛情だ』っていうだろう? 愛美≠チて名前、すごくステキだね。僕は好きだな
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