暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
恋の予感……
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、月半ばだからみんな金欠なんじゃないですか。お家から仕送りがあるの、大体二十五日以降ですから」
「ああ、なるほど」
(そういうわたしのお
財
(
サイ
)
布
(
フ
)
の中身も、そろそろピンチなんだけど)
愛美は自分の財布を開け、こっそりため息をつく。
あしながおじさん≠ゥら今月分のお小遣いが現金書留で送られてくるのも、それくらいの頃なのだ。
「愛美ちゃん、支払いのことなら心配しなくていいよ。ここは僕が払うから」
「えっ? ……はい」
またも表情を曇らせていた愛美を気遣い、純也はそう言ってくれたけれど。全額彼に払ってもらうのは愛美も気が引けた。
金額次第では、自分の分くらいは自分で……と思っていたのだけれど。
「すみません。ここのオススメは何ですか?」
純也はテーブルにつくなり、女性店員に声をかけた。
「そうですね……。季節のフルーツタルト、シフォンケーキ、あと焼き菓子やアイスクリームなんかも人気ですね」
「いいね、それ。じゃ、イチゴタルトとシフォンケーキと、マドレーヌとチョコアイスを二人分。あと紅茶も。ストレート……でいいのかな?」
「あ……、はい」
愛美は訊かれるまま返事をしたけれど、メニューも見ないでドッサリ注文した純也に肝が冷えた。
店員さんはオーダーを伝票に書き取り、さっさと引き上げていく。
(えーっと、コレ全部でいくらかかるの?)
彼女はメニューに書かれた価格とにらめっこしながら、頭の中で電卓を叩いてみた。
(イチゴタルトが六百五十円、シフォンケーキが四百円、マドレーヌが百五十円、チョコアイスが二百円、紅茶が四百五十円。これを二倍すると……、三千七百円! 一人前で千八百五十円!?)
先ほども言ったけれど、愛美は現在金欠である。「自分の分だけでも払おう」と思っていたけれど、この金額ではそれもムリだ。
「純也さん……。ちょっと頼みすぎじゃないですか?」
「大丈夫だよ。支払いは僕が持つって言っただろう? それに、僕は甘いものが好きでね。いつもこれくらいの量は平らげちゃうんだ」
「はあ、そうですか。――じゃあせめて、珠莉ちゃん呼びましょう。そろそろ補習も終わる頃だと思うんで」
愛美がポケットからスマホを取り出し、珠莉に連絡を取ろうとすると、純也に止められた。
「いや、いいよ。高校生がカフェインを
摂
(
と
)
りすぎるのはよくないし、あまり
姪
(
めい
)
には気を遣わせたくないんだ」
「あの……、それ言ったらわたしも同じ高校生なんですけど」
今日知り合ったばかりの相手なのに、ついツッコミを入れてしまう愛美だった。
「……ああ、そうだったね。でも、それは
建前
(
たてまえ
)
で、本当は僕、あの子が苦手でね」
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