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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
恋の予感……
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この学園を訪ねてくるらしいことだけは何となく分かる。
「もう近くまで来てらっしゃる!? ムリですわ! 私、これから補習授業がありますのに!」
珠莉は相当困っているらしい。
補習を受けなければならないのは中間テストの成績が思わしくなかったからで、それは自業自得なのだけれど。相手は珠莉の都合などお構いなしのようで、愛美としてもちょっと彼女がかわいそうに思えてきた。
「……分かりましたわ。私は案内して差し上げられませんけど、誰かに代わりをお願いします。それでも構いません? ……ええ、そうですか。じゃあ、失礼致します」
通話を終えた珠莉は、大きなため息をついていた。
「珠莉ちゃん。電話、誰からだったの?」
「あら、愛美さん。
叔父
(
おじ
)
からですわ。これからこの学校を訪問するから、案内を頼みたいっておっしゃられて」
「叔父さま……」
(……あれ? 確か『あしながおじさん』にもこんなシチュエーションが出てきたような)
愛美はふと思い当たり、そして次の展開の予想もできた。
(この流れだと、もしかして……)
「ねえ愛美さん。あなたは今日、これで学校終わりよね?」
「えっ? ……あー、うん。補習受けなくていいし」
(やっぱり)
愛美の予想は的中したようだ。珠莉はどうやら、愛美に叔父の案内役を頼むつもりらしい。
「なになに? 何のハナシ?」
いつの間にか、さやかも廊下に来ていた。
「じゃあ、あなたに叔父の案内をお願いするわ。補習は四時半ごろ終わる予定だから、その頃に私を電話で呼んで下さいな」
「ちょっと珠莉! 愛美にだって断る権利くらいあるでしょ!? そんな一方的に――」
さやかが愛美を
擁
(
よう
)
護
(
ご
)
する形で、二人の間に割って入った。
「いいよ、さやかちゃん。珠莉ちゃん、わたしでよかったら引き受けるよ」
とはいえ、嫌々でもなかった愛美は
快
(
こころよ
)
く珠莉の頼みを受け入れた。
実は内心、珠莉の叔父という人物がどんな人なのか興味があったのだ。
「いいの、愛美? 引き受けちゃって」
「うん、いいの。今日は宿題もないし、部屋に戻っても本を読むくらいしかやることないから」
「あら、そうなの? ありがとう、愛美さん。じゃあお願いね。――さやかさん、補習に遅れますわ。行きましょう」
「え? あー、うん……。いいのかなあ……?」
さやかは少々納得がいかないまま、後ろ髪をひかれるように珠莉に補習授業の教室まで引っぱっていかれた。
愛美は一旦部屋に戻ると、私服――デニムのシャツワンピース――に着替え、寮の管理室の隣にある応接室のドアをノックした。
「失礼しまーす……」
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