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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
旅立ち、新生活スタート。
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礼します。これからよろしくお願いします。  かしこ

四月三日  双葉寮二〇六号室       相川 愛美
田中あしなが太郎さま  

P.S. こうしてきちんとルールを守っているの、偉いってほめて下さいますか? 施設で長く暮らしてきたの、伊達(だて)じゃないんですよ。』                         

****


 ――あしながおじさん≠アと田中太郎氏の住所は聡美園長から教えてもらっていて、手帳にメモしてある。
 東京(とうきょう)世田谷(せたがや)区。住所からして、高級住宅地に住んでいるらしい。 
 
(この住所で秘書さんの名前にして届くってことは、もしかして同じ家に住み込んでるのかな……?) 

 そんな疑問を抱きつつも、愛美は書き終えた手紙を四つ折りにして封筒に入れ、あて名を〈久留島栄吉様方 田中太郎様〉と書いた。
 切手はここまで来る途中の郵便局で買った、きれいな切手シート。十枚が一シートになっていて、千百円だった。
 果たしてこの切手シートがいつまでもつか。きっと新しい発見があるたびに、あしながおじさんに手紙を書くんだろうなと愛美は思った。


   * * * *


 この手紙は翌日にポストに投函し、そのさらに翌日――。

 クローゼットの鏡の前で、愛美は真新しい制服に身を包んだ自分の姿を感慨(かんがい)深げに見つめていた。

(いよいよ、わたしの高校生活が始まるんだ――!)

「愛美ー、そろそろ行くよー」

「うん、今行く!」

 廊下からさやかの呼ぶ声がする。黒のハイソックスのよれを直してから、愛美は返事をした――。   
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