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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
旅立ち、新生活スタート。
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自分に一人部屋が当たったことで、この子の希望が叶わなくなったんだ。
――もっとも、愛美が望んでそうなったわけではないので、彼女が責任を感じる必要はないのだけれど。
――と。
「まぁったく、ヤな感じだよねえあの子」
「……え?」
嫌
(
けん
)
悪
(
お
)
感丸出しで、一人の女の子が愛美に声をかけてきた。とはいっても、その嫌悪感の
矛先
(
ほこさき
)
は愛美ではなく、用務員さんともめている長身の女の子の方らしい。
身長は百五十センチしかない愛美より少し高いくらい。肩まで届かないくらいの黒髪は、少しウェーブがかかっている。
「あの子ね、あたしと同室になったんだけど。それが気に入らないらしいんだよね。ったく、あたしだってゴメンだっつうの。あんな高ビーなお嬢がルームメイトなんて」
「あの……?」
多少口は悪いけれど、突っ張っている風でもない彼女に愛美は完全に
気圧
(
けお
)
されている。
「――あ、ゴメン! あたし、
牧村
(
まきむら
)
さやか。よろしくね。アンタは?」
「あ、わたしは相川愛美。よろしく。『さやかちゃん』って呼んでもいい?」
「うん、いいよ☆ じゃああたしは『愛美』って呼ぶね。あたしたち、部屋となり同士みたいだよ」
「えっ、ホント? ――あ、ホントだ。よろしく」
部屋割り表を見れば、確かにそうなっている。
早くも友達になれそうな子ができて、愛美はますますこの高校での生活が楽しみになってきた。
その一方で、辺唐院珠莉と男性職員との口論はまだグダグダと続いていた。
「あの……。よかったら、わたしと部屋代わる?」
見かねた愛美が、おずおずと珠莉に部屋の交換を申し出たけれど。
「いいよ、愛美。そんな子のワガママに付き合うことないって。――ちょっとアンタ! あたしと同室なのがそんなに気に入らないの!?」
どうやらさやかは、言いたいことをズバズバ言うタイプの子らしい。
(さやかちゃん……、そんなにはっきり言わなくても)
愛美は絶句した。これ以上話をこじれさせてどうするのか、と。
〈わかば園〉にいた頃はケンカらしいケンカもなかったので、愛美は基本的に平和主義者だ。人のケンカやもめ事に首を突っ込むのは苦手である。
けれど、この場では愛美も当事者なのだ。珠莉の
怒
(
いか
)
りの矛先が愛美に向くこともあるかもしれない。そうなった時の対処法を彼女は知らない。
(わ……、なんかすごい人集まってる!)
愛美が驚いた。気づけば、「周りには大勢の新入生や在校生と思われる女の子たちが
騒
(
さわ
)
ぎを聞きつけて、「なんだなんだ」と集まってきていたのだ。
「……同室? じゃあ、あなたが牧村さやかさん?」
「そうだけ
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