暁 〜小説投稿サイト〜
探偵オペラ ミルキィホームズ 〜プリズム・メイズ〜
ヒュートリエットの蚤の市
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常生活に使うありとあらゆるものが、見渡す限りに並んで広がっている。
「・・・あっ、可愛い絵本・・・。」
 ふ、と右の露店に目を向けたエリーが、吸い寄せられるようにそちらへ近づく。
「こんなのが”可愛い”って言うの? エリーって変わってるね」
 悪気はないらしい言い方で、ネロ。独特のタッチで描かれた様々な動物たちが表紙になっていて、中を開くと、パステル・カラーの、デフォルメされた動物たちや、花々、人の姿。残念ながらスウェーデン語はあまり読めない。
「・・・そ、そうかな。あっ、髪飾り・・・」
 小さな星のついたヘアピンが、エリーの目に止まった。
「ネロに似合いそう・・・。」
 何気なく、手に取ってみる。
「えーっ? やだよ、よせよ、似合わないって」
「そんなことない。ほら」
 ピンをネロの髪にさして、店先にある鏡に映して見せるエリー。
「・・・そ、そうかな・・・」(エリーにそう言われると、なんだかそんな気がしてきてしまうじゃないか。・・・ずるい。)
 ネロの内心なんて知らずにエリーは、にこにこと微笑んでいる。
「・・・っ、あ、ねえ、あれ何だろ!」
 なんだかやりきれなくなったネロは、遠くの露店の店先を指差した。
「えっ・・・」
「行ってみようよ!」
 エリーの手を引いて走り出す。
「お店は逃げないと思う・・・! ねえ、ネロ・・・!」

 店先で立ち止まったネロは、しばらく、吊り下げられた多種多様な服を、一着ずつ順に物色していたが、やがて何着かを腕にかけてエリーのところまで戻ってきた。
「ねぇねぇ、これなんかコーデリアに似合うと思わない? 小さい花がいっぱい付いてる」
「コーデリアさんたちの服まで探すつもりなの・・・?」
「見てるだけだよ! ほらほら、エリーも」
 ひらひらのワンピースを渡されて、思わず受け止めてしまう。涼やかな水色で、布の手触りが気持ちいい。つい、値札など確認してしまう。
「・・・あ。あら? これ・・・」
 値札が付いていない。ネロが持っているものにも。
 不思議に思っていると、別の客と出店者のやりとりが聞こえてきて、謎が解けた。
 値段の交渉をしていた。
(そ・・・、そんな。恥ずかしくてお買い物ができない・・・。)
 うつむいてしまう。
 どんなに素敵なワンピースだって、お店の人に話しかけて、幾らですかって訊かないといけない。
(・・・そ、そんな。恥ずかしい・・・)
「ねぇねぇオバちゃん! これとさ、これもつけてよ。全部で1000クローネで売ってくれない?」
 ネロは怖気づかない。
 戦利品を手にして振り返り、にこりと笑った。
「ね。エリーもそれ欲しいの? 訊いてみたら?」
「は、恥ずかしくて・・・」
「僕が訊いてあげようか?」
 何でもないことのように、ネロは言う
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