暁 〜小説投稿サイト〜
探偵オペラ ミルキィホームズ 〜プリズム・メイズ〜
ヒュートリエットの蚤の市
[2/3]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
常生活に使うありとあらゆるものが、見渡す限りに並んで広がっている。
「・・・あっ、可愛い絵本・・・。」
ふ、と右の露店に目を向けたエリーが、吸い寄せられるようにそちらへ近づく。
「こんなのが”可愛い”って言うの? エリーって変わってるね」
悪気はないらしい言い方で、ネロ。独特のタッチで描かれた様々な動物たちが表紙になっていて、中を開くと、パステル・カラーの、デフォルメされた動物たちや、花々、人の姿。残念ながらスウェーデン語はあまり読めない。
「・・・そ、そうかな。あっ、髪飾り・・・」
小さな星のついたヘアピンが、エリーの目に止まった。
「ネロに似合いそう・・・。」
何気なく、手に取ってみる。
「えーっ? やだよ、よせよ、似合わないって」
「そんなことない。ほら」
ピンをネロの髪にさして、店先にある鏡に映して見せるエリー。
「・・・そ、そうかな・・・」(エリーにそう言われると、なんだかそんな気がしてきてしまうじゃないか。・・・ずるい。)
ネロの内心なんて知らずにエリーは、にこにこと微笑んでいる。
「・・・っ、あ、ねえ、あれ何だろ!」
なんだかやりきれなくなったネロは、遠くの露店の店先を指差した。
「えっ・・・」
「行ってみようよ!」
エリーの手を引いて走り出す。
「お店は逃げないと思う・・・! ねえ、ネロ・・・!」
店先で立ち止まったネロは、しばらく、吊り下げられた多種多様な服を、一着ずつ順に物色していたが、やがて何着かを腕にかけてエリーのところまで戻ってきた。
「ねぇねぇ、これなんかコーデリアに似合うと思わない? 小さい花がいっぱい付いてる」
「コーデリアさんたちの服まで探すつもりなの・・・?」
「見てるだけだよ! ほらほら、エリーも」
ひらひらのワンピースを渡されて、思わず受け止めてしまう。涼やかな水色で、布の手触りが気持ちいい。つい、値札など確認してしまう。
「・・・あ。あら? これ・・・」
値札が付いていない。ネロが持っているものにも。
不思議に思っていると、別の客と出店者のやりとりが聞こえてきて、謎が解けた。
値段の交渉をしていた。
(そ・・・、そんな。恥ずかしくてお買い物ができない・・・。)
うつむいてしまう。
どんなに素敵なワンピースだって、お店の人に話しかけて、幾らですかって訊かないといけない。
(・・・そ、そんな。恥ずかしい・・・)
「ねぇねぇオバちゃん! これとさ、これもつけてよ。全部で1000クローネで売ってくれない?」
ネロは怖気づかない。
戦利品を手にして振り返り、にこりと笑った。
「ね。エリーもそれ欲しいの? 訊いてみたら?」
「は、恥ずかしくて・・・」
「僕が訊いてあげようか?」
何でもないことのように、ネロは言う
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ