一巻
二話
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
か?」
「ああ、構わないよ一夏君」
「そっか!よろしくなシャア」
成程、人付き合いが苦手というわけではなさそうだ。むしろ、率先して人とのやり取りをしたがるようだ。
彼が差し出した手を握り返すと、楽しげな雰囲気で一夏が話す。
「いやあ、俺のほかにも男がいてくれて助かった!俺一人じゃ心細くてな」
「いや、むしろたくさんの女性に囲まれているんだ。男として喜ばしい事じゃないかな」
「おお!シャアってもしかして肉食系か?」
「いや、私にはとても。……一夏君はどうなんだ」
「俺にも正直、気苦労の方が大きそうだよ」
そういって肩をすくめる一夏。色を好むってわけでもなし、か。いたって普通の好青年だ。
むしろ、周りの方が気がかりだ。
皆、平静を装って会話するものや奇異の視線を隠さないもの、誰もが私たちの会話に聞き耳を立てている。
まあ、数少ない男性IS起動者ともなれば当然か。それに皆若い。思春期なら女ばかりかと思われた学園生活に男を放り込めば、こうもなる。
そう考えていると、打って変わって今度は申し訳なさそうに一夏が口を開いた。
「その……なんだ、ごめん」
「何がだ?」
「俺の、俺がISを起動したせいで。IS搭乗者としての道しか残ってなかったんだろ?ほかにやりたいこともあっただろうに……俺のせいで、全部閉ざされちまった」
ふむ、気遣いもできる。優しい男だ。
「かまわないさ。それにISに乗るのだって別に嫌なわけじゃない」
「そうなのか?」
「ISは、宇宙での活動を主目的としたパワードスーツだ。宇宙に行けるとなれば、男なら心躍るだろう」
「そっか、宇宙か!たしかに、それなら楽しみだな!」
実のところ、この言葉は本心だ。
この世界に生まれついて十数年。生粋のスペースノイドたる私には、少し宇宙が恋しくなる時がある。
それに、もしかしたら____
「……ちょっといいか」
____少し感慨に浸っていると、一夏の後ろから声が聞こえた。
「……箒?」
肩下まである髪を白いリボンで結ったポニーテールの、いかにも大和撫子って感じの少女だ。どうやら一夏と知り合いらしい。
しかし、近づいてくるのにすら気づかないとは、少し深く考え込んでしまったようだ。この癖は直さなくては。
「……廊下でいいか?」
「お、おう。えっと、すまんシャア」
「構わないとも」
そう言うと、一夏は少女に連れていかれた。
それと入れ替わる様に、影が一つ私の隣に。
「……まさかあのようなことを考えていたのですか?シャアさん」
「あのようなこととはなんだ、セシリア君」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ