GGO編
百話 模擬戦闘
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し、その動きに、これまで以上に長くプレイしてきた彼の体がまたしても反射的に動いた。
シュピーゲルは、彼から見て右側に向かって、思い切り倒れ込むように飛び込んだのだ。
それはある意味で、自分の信じていた価値観を消さんとする、新川恭二の意地だったのかもしれない。
ここで負ければ、自分が今まで信じてきた価値観が嘘になる。怒りの、憎しみのやり場が、その根拠が、嘘になる。そうしたら、自分は自分の間違いを認めなければいけない。本当に愚かなのは、親でも、本当の顔も知らない赤の他人でも、世界でも無く、自分自身だと認めなければならなくなる。それは、とてつもなく恐ろしいもので、そんな物を見止める訳には行かないから。間違っているのは、自分の世界が上手くいかないのは、自分のせいじゃないから……それを、証明し続けなくてはいけないから。
そんな、どうしようもないと、自分の中の何処かで気づいて居る根拠の為の、意地だったのかもしれない。
「なっ!?」
「うああぁぁぁっ!!!」
無我夢中で倒れた体を返し、ARの銃口をリョウコウに向ける。
対しリョウコウはそのまま追撃を開始しており、少し引かれた右腕からの突きが既に此方に切っ先を向けている。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」
しかしそれが放たれるよりも早く、奇声を上げてシュピーゲルが引き金を引いた。しかも今度は確実に当たるよう、胴体に向けて。だ。今度こそ当たる、確信を持って放たれた弾丸……
「うおっりゃぁっ!!」
それをリョウコウは、突如として下半身に力を入れたかと思うと……その力を一気に解放し……ブンッと低い音を立て、殆ど下半身だけを空中に跳ね上げる事で、空中で逆立ちの海老反りのような体勢となる事で、避けて見せた。
────
『な……』
もはやシュピーゲルは唖然とするしかなかった。
そんな風に銃弾をかわす等、聞いたことが無い。最早この男の発想や動きは、ステータスや武装と言う範疇を超えている……
自分の、常識を超えている……
そんな事を思っている間に、逆さま状態のリョウコウの足が天井に付き……
「Gotcha(殺ったぜっ)!」
その体がまるで弾丸のように、シュピーゲルに突っ込むと同時に、試合は終わった。
試合時間 十三分四十秒
模擬戦闘終了 勝者《ウィナー》 リョウコウ
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