GGO編
百話 模擬戦闘
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、シュピーゲルは少しだけ息を付き、窓を眺めた。
──音は、まだ聞こえない
大きな窓だ。最早外壁となるべき部分は殆どが窓になっており、一枚で高さ三メートルはあるのではないだろうか。
──音は、まだ聞こえない
随分と屋上を調べるのが長いな。
と、そこまで考えて、新川は思った。
そう言えば、昔何かの映画で、爆発から逃れるために消火ホースを体に巻いてビルの外壁から飛び降りるって映画が……
──音は……まだ、聞こえない。
まさか……
──音は……
まさか……っ!!?
ガシャアアアアアアアァァァァァン!!!!と言う大音響が、シュピーゲルの目の前から響いた。
「くっ!?」
小さく声をもらしながら、彼はARの銃口を其方に向けた。
窓から飛び込んできた人影は長身で赤毛。最低限のコンバットウェアしか身に着けていない有り得ない程の軽装で、帯銃すらしていない。代わりとばかりに、肉厚のコンバットナイフが申し訳程度の威圧感を放っている。
大丈夫だ。まだ窓から此処までの距離は10m近く在る。相手は筋力型。それだけあれば……!
「うるぁっ!」
「なっ!?」
直後、シュピーゲルに向かって、キャスター付きの椅子が吹っ飛んで来た。リョウコウが近場にあったそれを、銃が向けきられるより前に思い切り投げてきたのだ。
『このっ……!』
小賢しい真似を……!
そう思いながらシュピーゲルは引き金を引く。数発の弾丸が発射され、椅子が細かい部品や破片を撒き散らして吹き飛ぶ。
と……
「おぉぉぉっ!」
赤毛の女性……もとい、青年が、その下を潜るかのように凄まじく低い体制で突っ込んできた。
その距離は先程の半分にまで縮まっている……!
「っ……!」
慌てなかった。と言えば間違い無く嘘になるだろう。しかしだからと言ってパニックを起こす程で合ったかと言えば、そうでもない。
反射的に射撃を止め、射線を下に下げる。リョウコウの進む進路と彼のARの射線が、重なった。
『殺った……!』
引き金を引く。彼に取っては少々重めに感じるリコイルショックが肩を伝い、弾丸が打ち出され……
「っっぁぁぁぁぁああああ!!!」
しかし、弾丸は命中しなかった。
否。正確には“命中”はしたのだ。
リョウコウは、全速力で進んでくる進路を、“ほんの少しだけ”彼から見て右に逸らした。まぁ、逸らした。と言うよりは、それが彼に出来る最大限の進路変更だったのだろう。
その結果、撃ち出されたいくつもの弾丸は、彼の左腕をポリゴン片に変え……それで終った。
「っ!?」
「推オオオォォォっ!!」
右腕だけで突き出されたナイフが、新川の首元へと銀閃の尾を引いて一直線に迫る。しか
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