第1章 やって来ました剣と魔法の世界
第3話 桃花
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な処置だと思いますしね。
つまり、これから行うのは、桃の木に最初の段階で霊力を分け与えて、次に一年分の成長を短い間に行い、そして来年の花を咲かせた後に、もう一度、桃の木を癒すと言う、三つの仙術を行使すると言う事に成ります。
「それでは見ていて下さい」
ゆっくりと、たったふたりの観客に対して、そう告げる俺。
その刹那。辺りの雰囲気……いや、辺りと言うよりも、桃の木から感じる雰囲気が変わった。
ゆっくりと、しかし、ふたりが見ている目の前で、次々と散って行く花びら。
そして、明らかに増して行く緑の勢い。
そう。現在は、桃の花が咲いている季節なのですから春。それも、三月末から四月頭ぐらいだと思われるのですが、何故か、この桃の木だけが葉などの勢いから、初夏を思わせる雰囲気を感じさせ始めた。
花の季節から新緑の季節へ……。
やがて、ふたりの観客の見ている目の前で徐々に季節は移ろい、見事な果実を付ける桃の木。
そして……。
「ハルファス。せっかくやから桃の果実を集めるから、籠を用意して貰えるか」
一度、術の行使を止め、桃の木の時間を通常の空間と同じ流れにしてから、俺はハルファスにそう告げた。
それに、せっかく付けた桃の実です。これは、この桃の木に取って自らの分身で有り、未来への希望。仇や疎かにする訳には行きません。
ハルファスより手渡された籠を手に宙に浮かぶ俺。本来、桃の実は虫などの害にやられ易い物なのですが、現在の、この木の付けた実に関してそれは有り得ない。
何故ならば、自然の法を歪めて、この木だけの時間を進めた結果、実った果実です。そこに、害虫が付く時間などは有りませんからね。
桃の実を集め終わった後、再び時間を進める。
真夏を思わせる桃の木。何故か、照りつける強い日差しと、木陰の作り出す涼を感じさせる。
そして、少し物悲しい秋が終わった後にやって来るのは冬。
すべてを終わり、そして、次の始まりに備える季節。
一枚、更に一枚と葉を落とし、本当に来年に備えるかのような桃の木。
そう。本来は有り得ない事なのですが、そこから何故か、寒々とした真冬の雰囲気。まるで小枝に積もった雪さえも感じさせていた。
やがて、季節が移ろい……。
再び巡り来る始まりの季節。
一輪、一輪と咲き始める桃の花。そして……。
「これが、お嬢様の御所望の私の魔法です」
濃密な桃の香りを漂わせる淡い色彩に包まれた空間の真ん中で、やや芝居がかった仕草で終幕の台詞を口にする。そして、その後に中世のヨーロッパの貴族のように。もしくは、舞台の上の一人芝居の俳優のように一礼を行う俺。
たったふたりの観客の為に。
今年二度目の満開を迎
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