第一話 旅立ちの風
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えられない!それに俺には親父の剣がある!絶対負けない』
今度はオルガが沈黙する。
『頼むぜ親父。可能性が0じゃない以上は、やってみたいんだ』
オルガは沈黙を続けるが、やがて口を開く。
『・・・分かってるとは思うが、相手は紋章騎士団だ。
だが、お前にそこまでの覚悟があるなら、もう止めはしねえ。
だがなアッシュ、これだけは言っておく』
『なんだよ?』
『アッシュ、お前はいつか必ず大きな壁にぶち当たる。その時が
来たら、迷わず戻ってこい。約束しろ』
父オルガは、まるで全てを見透かしているかのように断言した。
同時にアッシュも、父の一言に今まで以上に戦慄を感じていた。
それでも、彼の意志に一切の迷いはない。
『あぁ、わかったよ』
オルガは自身の腰にさしていた剣を、アッシュに投げ渡した。
それを右手で受け止め、今まで使っていた稽古用のソレと差し替える。
笑顔で軽く礼を言うアッシュと、それにサムズアップで応える父オルガ。
だが、彼が家を出た次の瞬間―――
『ようアッシュ!俺をさしおいて抜けがけか?』
『ジェイルか』
アッシュのすぐ目の前には、同じ歳ぐらいの青年がいた。
名はジェイル=クローヴァー。
二人は幼い頃より、互いに剣の腕を磨きあってきた親友にして、同時にライバルでもある。
アッシュのような異能力こそ使えないが、それでも十分背中を預けられる相棒だ。
『そういう訳じゃねえんだけどさ、お前まで巻き込みたくないっていうか』
それを聞いたジェイルは笑う。
『お前さ、あまり似合わないぜ?そーいう言葉』
『うるせえな』
ジェイルは続けて、
『それに、たった一人で紋章騎士団に挑んでどうにかなると思うか?』
『それは・・・』
アッシュは言葉を詰まらせる。
よく考えてみれば、ジェイルの言うとおりだった。
世界の再生だけに意識がとらわれ過ぎて、冷静さが欠けていたのだ。
そんなことにも気付かなかった己自身に少し腹を立てながらも、アッシュはこう返す。
『OK、一緒にいこうぜ』
『決まりだな!』
ダーティスに住む青年、アッシュ=ランバードはついに旅立ちを決行する。
全てを変える為に。
真実を確かめるために。
そして、これ以上の悲劇を失くす為に。
青年の辛く悲しい戦いは、この時より始まる。
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