暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第239話:二兎を得ても一兎を得られず
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うなんでね。無茶は承知の上だ、頼む。奏だってこの下で待ってるんだ。俺1人がジッとしてる訳にはいかねえんだよ」

 意地でも譲ろうとしない颯人に、ガルドと透は顔を見合わせ大きく溜め息を吐いた。こうなったら颯人は止まらない。意地でも立ち上がり、素手でも何でも使って戦おうとするはずだ。そんな無茶をさせるくらいなら、少しでも安全性を確保する為に変身し魔法が使えるようにしてやった方が良い。

 2人は渋々といった様子でプリーズの指輪を嵌めた颯人の右手をそれぞれのハンドオーサーの前に持って行った。

「言っておくが、少しだけだぞ」
「分かってるよ、サンキューな」
〈プリーズ、プリーズ〉

 2人の魔力が順番に颯人へと供給されていく。それぞれの現在の変身が維持できるギリギリのラインを見極めての魔力供給だったので一人一人の魔力はあまり多くは無いが、それでも2人分揃えば颯人が再び変身するだけの魔力は十分に賄えた。

「よし、これだ何とか……!」

 魔力が回復し、自力で立ち上がった颯人は通常のフレイムスタイルに変身して急ぎ響と未来の元へと向かっていった。その頃には他の装者達も異変を感じ、2人の周りに集まって来る。

 そんな彼ら彼女らに見向きもせず、未来は静かに口を開いた。

「良き哉……人の生き汚さ、百万の夜を超えて尚、地に満ち満ちていようとは」

 白銀のローブを纏った未来の口から紡がれる言葉は、彼女らしからぬ厳かさを持っており口調も他者を見下す威圧感のある物となっていた。まるで別人になったかのような未来の姿に、装者達は不安げに互いに顔を見合わせ、マリアはらしくない未来の言葉遣いに声を上げた。

「よしなさいッ! あなたにそんな物言いは似合わないッ!」

 マリアの言葉に、しかし未来は一瞥するだけですぐに興味を失ったように視線を頭上に浮かぶ月へと向けた。

「後は、忌々しい月の…………う゛ッ!?」
「んん?」

 突然、未来が頭を押さえて苦しみ始めた。頭の中で何かが暴れているのを押さえようとしている姿に、颯人は今の未来とは違う本来の未来の人格が表に出ようとしているのではと期待した。
 しかし別角度から未来を見ていたクリスは、彼女が苦しむ理由に気付き目を見開いた。

「う、うぅ……!?」
「未来……!?」
「小日向?」
「ハッ!? 身に纏うそいつは、まさかあの時と同じッ!?」

 見ると未来の背中側、首の付け根から背中の中程に掛けて奇妙な装置があった。最初は身に纏うローブの一部かと思っていたが、その部分だけラインが赤く発行しそこを中心に赤い光が沁み込むように広がっている。その様子と未来の姿から、クリスはそれが嘗てフロンティア事変の際に未来が身に着けさせられた、ダイレクトフィードバックシステムと同種のも
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