暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
勘のいい子
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


「う……ぐ……ああああああああああああああああああああっ!」

 叫ぶハルト。
 一方、教授はそれを平然とした態度で見下ろしていた。

「なるほど。彼は結局、人類を脅かす怪物だったというわけですか。蒼井さん。貴女が彼を葬るには、十分な大義名分があります」
「……っ!」

 パチン。
 乾いた音が大きく響く。振り向きざまの彼女が、教授の顔面にビンタを放っていたのだ。

「蒼井のマスターが、こんな人だったなんて……!」

 えりかの目には、明らかに怒りが滲み出ていた。

「見損ないました。蒼井は……貴方のサーヴァントであることを嫌悪します」
「おや、おや」

 だが、自らのサーヴァントであるえりかからの怒りも、教授は全く意に介さない。

「それはそれは。折角あなたにも、私の研究を手伝っていただきたかったのですが、あまり協力は見込めなさそうですね」
「当たり前です! 結梨ちゃんを元に戻す以外のことで、協力なんてできません!」
「元に戻す? 結梨を?」

 教授はゆっくりと起き上がる。

「おかしなことを言いますね、蒼井さん。結梨はホムンクルスとして作った。戻すことを考慮していませんよ」
「……!」

 えりかが歯を食いしばる。
 彼女が再び動くよりも先に、ハルトが教授の襟首を掴み。

「歯を食いしばれ!」

 ファントムの力を体内に流し、強化された拳で教授の顔面を殴り飛ばす。
 面に多少のヒビが入った教授は、そのまま吹き飛び、壁に激突した。

「おや、おや」

 並の人間では耐えられるか疑わしい力なのに、教授は変わらない動きで立ち上った。

「感情的になるとは。可愛いですね」
「何で……何で……!」

 ハルトは叫ぶ。

「何で人間は……どいつもこいつも……目先の願いばかりを……! 自分の大切なものさえも犠牲にしようとするんだよ! 何で何が何でも他の誰かを傷付けるんだよ!?」
『それが人間の本性だよ。ウィザード』

 突然、この場にいない存在の声に、ハルトとえりかは跳ね上がる。

「おや、おや……こんなところにわざわざ足を運んでいただけるとは。どのようなご用件でしょうか」

 一方、教授は平静な態度で声の主を見つめる。
 小部屋から外。薄暗い地下研究所の広間にて、それはいた。

『君に用があるんだ。ボンドルド』

 それははっきりと、教授を本名で呼んだ。
 ボンドルド。
 躊躇いなく、研究室の表札に付けられていた名前を呼んだそれは。

『賢者の石___粗製でも生成に成功した、君にね』

 白い体と桃色の目を持つ、無表情の生命体。
 聖杯戦争の監督役の一人、キュゥべえ。
 その桃色の瞳が、じっと倒れている教授を見つめていた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ