勘のいい子
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「う……ぐ……ああああああああああああああああああああっ!」
叫ぶハルト。
一方、教授はそれを平然とした態度で見下ろしていた。
「なるほど。彼は結局、人類を脅かす怪物だったというわけですか。蒼井さん。貴女が彼を葬るには、十分な大義名分があります」
「……っ!」
パチン。
乾いた音が大きく響く。振り向きざまの彼女が、教授の顔面にビンタを放っていたのだ。
「蒼井のマスターが、こんな人だったなんて……!」
えりかの目には、明らかに怒りが滲み出ていた。
「見損ないました。蒼井は……貴方のサーヴァントであることを嫌悪します」
「おや、おや」
だが、自らのサーヴァントであるえりかからの怒りも、教授は全く意に介さない。
「それはそれは。折角あなたにも、私の研究を手伝っていただきたかったのですが、あまり協力は見込めなさそうですね」
「当たり前です! 結梨ちゃんを元に戻す以外のことで、協力なんてできません!」
「元に戻す? 結梨を?」
教授はゆっくりと起き上がる。
「おかしなことを言いますね、蒼井さん。結梨はホムンクルスとして作った。戻すことを考慮していませんよ」
「……!」
えりかが歯を食いしばる。
彼女が再び動くよりも先に、ハルトが教授の襟首を掴み。
「歯を食いしばれ!」
ファントムの力を体内に流し、強化された拳で教授の顔面を殴り飛ばす。
面に多少のヒビが入った教授は、そのまま吹き飛び、壁に激突した。
「おや、おや」
並の人間では耐えられるか疑わしい力なのに、教授は変わらない動きで立ち上った。
「感情的になるとは。可愛いですね」
「何で……何で……!」
ハルトは叫ぶ。
「何で人間は……どいつもこいつも……目先の願いばかりを……! 自分の大切なものさえも犠牲にしようとするんだよ! 何で何が何でも他の誰かを傷付けるんだよ!?」
『それが人間の本性だよ。ウィザード』
突然、この場にいない存在の声に、ハルトとえりかは跳ね上がる。
「おや、おや……こんなところにわざわざ足を運んでいただけるとは。どのようなご用件でしょうか」
一方、教授は平静な態度で声の主を見つめる。
小部屋から外。薄暗い地下研究所の広間にて、それはいた。
『君に用があるんだ。ボンドルド』
それははっきりと、教授を本名で呼んだ。
ボンドルド。
躊躇いなく、研究室の表札に付けられていた名前を呼んだそれは。
『賢者の石___粗製でも生成に成功した、君にね』
白い体と桃色の目を持つ、無表情の生命体。
聖杯戦争の監督役の一人、キュゥべえ。
その桃色の瞳が、じっと倒れている教授を見つめていた。
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