勘のいい子
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める。生物は動かないまま、不思議そうにハルトたちを見上げている。
「ええ。神の領域___人間の都合よく生物を作ることが出来れば、人間が立ち入ることのできない災害現場でも救助の助けになりますし、僻地の探索もよりスムーズに行えるでしょう。他にも様々な場面で活用が期待されていますよ」
「……」
人間の都合よく生物を作る。
それは否が応でも、つい先ほど、自らをホムンクルスと称し、激戦を繰り返した蝶の怪人を否でも連想させる。
一方えりかは、好機の目を、新しい生命体に走らせている。「こ、こんにちは」とほほ笑んだ。
「蒼井は、蒼井えりかです」
すると、生命体はゆっくりと顔を上げた。やがて、
「え……りか」
「す、すごいです!」
えりかは驚いた表情で教授へ振り返った。
「名前を言えます! この子、本当にお話出来るんですか?」
「ええ。脳の構造は人間のものと、イヌ科のものに適応できるよう設計しました。各種の動物に応じて言語が分かれば、彼らとのコミュニケーションも出来るようになるでしょう」
「動物とお話できるなんて、御伽噺みたいです! ねえ、松菜さん!」
「そ、そうだね」
ハルトはぎこちなく頷いた。
一方、生命体はゆっくりとえりかの名前を繰り返す。
「え……りか え……りか」
「お姉……ちゃん」
「……!」
「っ!」
ハルトとえりかは、同時に目を見開く。
震えながら、ハルトは重い口を開いた。
「教授。最初に新生物を作ったの、いつでしたっけ?」
「二年前ですね」
「奥さんがいなくなったのは?」
「……二年前ですね」
「もう一つ聞いていいですか?」
そうして、ハルトは首をわずかに動かした。
その目は、いつしか赤い眼差しになっていた。
「結梨ちゃんは、どこに行った?」
「……おや、おや」
その質問に、彼は答えない。ただ。
その冷たい仮面で、ハルトを見返していた。
そして。
「おや、おや。お随分と勘がいいですね。私は好きですよ。君のような優秀な子は」
まるで、これからお茶でも飲みましょう、と言っているような声色で、教授は言った。
もう、ハルトの意識はない。
気付いた時には、ハルトは教授を突き飛ばし、その首を締め上げていた。
「やったな! アンタ、本当にやったんだな!?」
冷たい。
彼の体からは、人間の温もりを感じられない。
鋼鉄の仮面と同じく、冷たい反応しかない。
「こんな……人の命を弄ぶようなことが!」
「これが、愛ですよ?」
「愛? これのどこが!?」
「無価値なものを生命の探求に役立てるようにしたのです。これ以上の愛情がありますか?」
「ふ
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